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fate/vacant zero
白き空の国から
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な」

「それ以前にさっきのヤツの叫び声、中の連中に聞かれたんじゃねえか?
 後ろの船とか、かなりざわついてんぜ」


 デルフとシェルが急かしてくる。

 わりい、ここが敵地アウェーだってのすっかり忘れてた。

 それじゃ、とっとと船の中へ――



「いまの声はなんだ!」



 入れないらしい。

 黒くて長いぼさぼさ頭の男を先頭に、足下、船の中からどやどやと男たちが現れた。



「そら、言わんこっちゃねえ」

「しっかり中にも響いてたみてえだな」


 デルフとシェルがぼやき、正直ごめんと俺が呟き、男たちがこちらを振り向くまでの間に、隣に立つタバサは詠唱を完成させたらしい。

 いつものように長い杖を振りぬくと、足下からこちらを見つけた男たちの周りの雲が一段と濃くなり、その姿を完全に覆い隠した。



「雲の中でさらに雲を出す、か。
 なんとも地味なこったね。煙幕みてえだ」


 ぼそりとしたデルフの呟きをBGMに、真っ白く染まった眼下を、俺はじっと見据える。


 なんだろうか、この焦燥感。

 俺を睨みながら呪文を唱えるルイズを見ているような、この嫌な感じは。


「…………………………やべえ!」


 膨れ上がる"直感"に耐え切れずに、タバサを巻き込んで俺がその場を飛び退いたのと、



「くっ……、外したか」



 発動中だった『眠りの雲スリープクラウド』をぶち抜いた暴風が、俺たちの頭があった空間を通り過ぎていったのとは、ほぼ同時だった。



「――ひゅう。よく今のに気付けたな、ヒラガ」


 倒れた体の下から、シェルの声が聞こえてくる。



「俺も俺にびっくりだよ……っと、タバサ。怪我はないか?」


 立ち上がって、下敷きにしてしまったタバサの体を、手を取って起こす。



「ない」

「そりゃあよかった。……で、だ」

「で」


 二人して、先ほどまで『眠りの雲スリープクラウド』の溜まっていた辺りへ振り向く。



「てめえら、何者だ」



 男たちの殆どが地に伏すか、膝をつくなりしている中でただ一人。

 小揺るぎもせずに仁王立ち、剣をこちらに向けている男が居た。


 先ほども先陣切ってフネの中から飛び出してきた、汚れ詰襟を羽織った男である。

 無精ひげやぼさぼさの髪・服装の荒っぽさと、眼差しの放つ凛々しさが融合したその雰囲気に、俺は奇妙な違和感を覚えた。


 ……何者か、か。

 そういやこいつら、何者なんだろうな、なんて今さら思ったが、とりあえずは相手に応えておこう。



「ただの使い魔だよ
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