白き空の国から
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誘導に従って凧フネを目指した。
「また民間の商凧しょうせんとはな。いったいこれで何隻目だ?」
「さあな。数えるのもいい加減に馬鹿らしいが、20は越えてなかったか?」
霧の雲の中、後甲板で短い杖を腰に差した空賊が二人、自分たちの凧フネに曳かれる今回の獲物を見やりながら呟いた。
「民草も完全に貴族派についちまってる。もうもたねえな」
「まったくだ……、ん? いまなんか聞こえなかったか?」
空賊の片割れが、きょろきょろと霧に覆われた甲板を見回す。
「何かってなんだ?」
「何かは何かに決まってんじゃ……、うわっ!?」
凧フネが突風か何かに煽られて、どぉんと大きく揺れた。
見回していた方の空賊が、バランスを崩して尻餅をつく。
「いってぇ! くそ、なんなんだよ今の。突風か?」
と隣で後ろの凧フネに視線を向けたままの仲間に話しかけるが、返事が返ってこない。
それどころか、目を見開いて後ろの凧フネの方を向き、身動きすらも止めている。
「なあ、さっきのは何だと「りゅ、りゅ、りゅ」……は?」
もう一度尋ねようと口を開くと、その仲間はいきなり変なことを口走りだした。
「りゅ、竜だ! でっかい竜だよ! 目の前を通り過ぎていきやがった!」
「はぁ?
馬鹿言え、こんな所に飛竜ワイバーンの生息地なんて……」
はた、と言葉を切る。
飛竜の生息地は、この沿岸にはない。
そもそも、野生の竜がこんな視界の悪い雲の中を選ぶことはない。
つまり、その竜とやらが本物であるなら――
再び、どぉんと空気が揺れ、凧フネが揺れ、霧が揺れ。
ソレは、野生のものではなく――
ばっと視線を向けた甲板のど真ん中。雲に煙る視界の中で、あっという間に船上を横切っていく風竜の姿が映り。
――騎士しゅじんを乗せる、刺客。
その背から跳んだ二つの人影が、音も無く甲板へと降り立った。
口元を隠した影は長剣を抜き放ち、小柄な仮面の影は抜き身のナイフと杖を持った手をだらりと垂らしている。
「な――」
声を挙げた途端、長剣を握っている方の人影がぐるりと降り向き、こちらに向かって勢いよく突っ込んできた。
隣の仲間と共に杖を抜き放つが、その仲間は小柄な影がこちらも見ずにナイフを一振りした途端、ばったりと倒れこんでしまう。
「くそ! なんなんだ、お前らぁッ!」
毒づきながらルーンを短く唱え、まずはもう目前
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