違和感の交錯
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が直接出向けてありがたいが」
「まさか! 予定通り、わたしは向こうを追わせてもらうよ。
ラ・ヴァリエールのお嬢ちゃんを捕まえればいいんだったね?」
「……ああ、その通りだ。まったく、『土塊』ともあろうものが、強引なことだな」
「あんたには言われたくないよ。
あんたの名前とか、素顔とか、お嬢ちゃんを攫さらってどうするつもりだとか。
肝心なことはさっぱり教えてくれないじゃないか」
だが仮面の男はそれには答えず、その代わりにこんなことを言い出した。
「一つ、忠告だ」
「忠告? なんだい改まっちゃって。
無駄な探りは入れるなってかい?」
「違う。忠告だ、と言っただろう?
羽帽子の男のことだ」
フーケが不思議そうに眉を顰しかめる。
本当の意味での忠告とは、この男にしてはかなり珍しいことだった。
いや珍しいどころか、あの日、坊やたちに捕らえられた日の夜、連れ去られるように牢から助けだされて以来、初めてのことではなかろうか?
珍しいものを見る目で見つめられる仮面の男は、それを気にした様子も無く言葉を続ける。
「ヤツとは決して真正面からぶつかりあうな。衝突が避けられないようなら、大人しく撤退しろ」
「わたしが、そいつに勝てないっていうのかい?」
フーケの表情が苛立ちに染まった。
子供にしてやられた身とはいえ、こうもナメられるのは我慢ならない。
「落ち着け。いかなお前でも、スクウェア相手に無傷で勝てるとは言わんだろう?
こんな時に大怪我でもされては手間が掛かってかなわん」
「……そういうことなら、しかたないね」
苦々しく言い捨て、大きく息を吐いて気を静める。
ここから先は仕事の時間なのだ。
無駄に気を昂たかぶらせていても、失敗の素にしかならない。
「それじゃ、この場は任せたよ。岩人形ゴーレムは好きに使っちゃっておくれ」
「任された。合流は例の酒場でな」
わかってるよと呟いて、フーケは岩人形ゴーレムから飛び降り――
とぷん、と岩盤の大地に沈んでその場から消えた。
仮面の男はそれを見届けると、宿の方へと向き直って玄関口の戦場を見下ろす。
ちょうどそれに合わせたように、蛇のようなオレンジ色が眼下で揺らめき瞬いて、玄関から伸びてきた。
一瞬遅れて、そのオレンジに照らし出された傭兵の一人が吹き飛ばされ、岩人形ゴーレムの足に勢いよく激突した。
地上の傭兵たちの間にみるみる動揺が広まっていき、そのオレンジ色――『炎壁フレイムウォール』が揺らめくたびに、浮き足立った傭兵たちは一人、
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