違和感の交錯
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言ったんだ」
「き、貴族!?」
船員の目から、酔いが一瞬で吹っ飛び、勢いよく立ち上がると凧フネの中へと消える。
何分かして、寝ぼけ眼まなこでつばの高い帽子を被った初老の男を連れて戻ってきた。
どうやら、彼が船長らしい。
「なんの御用ですかな?」
船長は、戦乙女ゴーレムとソレに背負われたキュルケを胡散くさげに見つめた。
「女王陛下の魔法衛士隊、獅鷲グリフォン隊隊長のワルド子爵だ」
「――これはこれは。して、当凧とうせんへはどういった御用向きで?」
船長は身分を知るや否や、一瞬の内に態度を改めへりくだった。
「アルビオンへと、今すぐに出航してもらいたい」
「そんな無茶な!」
「無茶でも、やってもらわねばならん。これは勅命でな。王室に逆らうかね?」
「あなたがたが何をしにアルビオンへ行くかは知ったこっちゃありませんが、無理なものは無理です!」
「どうしてだ?」
「今日は風雅エオーの日ですよ! 風の外気マナが強化される日です!
せめてもう三時間は待たなけりゃ、『風石』の加速がつき過ぎてアルビオンの絶壁に突っ込んじまう!」
風石とは、風の魔法力を蓄えた鉱石のことだ。
凧フネは風の魔法力で空を進む。
よって、魔法を使えない平民が凧フネを飛ばすためには、何かしらのパワーソースが必須となる。
そのパワーソースがこの場合は風石なのだが、この鉱石に代表される自然製魔力石の魔法力は、外気マナの影響を非常に受けやすい。
風石の場合、風雅エオーの日に爆発的に強化され、そこから鉱石ユルの日まで七日掛けて弱まって行く。
このバランスが実に厄介で、アルビオンが遠ざかっている時は、風雅エオー以外の日に出航すると数日掛かりの大航空となってしまう。
逆にアルビオンが近づいている時は、風雅エオーの日に出航してしまうと力が強すぎて向こうの港町までの高さを稼ぐ時間が足りなくなるのである。
そのためどちらの場合でも多めに風石を保持していなければならないのだが、生憎と今のこの凧フネにそれほどの風石の余裕は無い。
船長はそこまで一気にまくしたてると、一度大きく息を吸って頭を冷やした。
「子爵様、当凧とうせんの積んだ風石の量では、この距離と時間タイミングで出航しても、どこぞで上昇気流でも捉まえられない限り壁にぶつかって全員お陀仏ですゆえ。
したがって、今は出港することが出来んのです」
「高さは、僕が稼ごう。僕は『風』のスクウェアだ」
船長と船員は、思わず顔を見合わせた。
ありがたいことに、風石を多少なりともケチれる可能性
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