違和感の交錯
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、塞いだ壁が内から砕けた。
中からは一つの影が飛び出し、それは先ほど登ってきた階段の方へと、放物線を半ば無視して吹き飛ばされていく。
空中と地上で平面軸が交差する一瞬、その影と目が合った。
「フーケ!?」
それは紛れもなく、自分たちが先ほどまで交戦していたフーケであった。
フーケはその勢いを緩めることなく、街に向かって落ちていく。
唖然としてそれを目で追っていると、『桟橋』の方から声を掛けられた。
「ルイズ! 三人とも! 無事か!」
「ワルド!」
ルイズの喜色が混じったその声が、援軍の到来であるとだけ認識してすぐ。
キュルケは、安堵感とともに意識を手放した。
倒れたキュルケの肩に応急処置をした一行は、取り急いで『桟橋』の中を昇り始めた。
キュルケは、ギーシュの『戦乙女ワルキューレ』におぶられている。
樹の中は巨大な吹き抜けになっていて、壁に点々と設置された松明たいまつが、枝に出る穴を螺旋に繋いだ階段を照らしていた。
その階段は吊り橋調の造りになっていて、一段ごとによくしなり、実に危なっかしい。
お蔭でギーシュは、『戦乙女ワルキューレ』が踏み抜いてしまわないかと戦々恐々しながら最後尾をゆくことになった。
というか、実際に上りきるまでに三回ほど板を踏みやぶってしまったため、その都度『錬金』で足場を補完する破目になった。
結果、目的の枝に出る頃には、ギーシュの精神力は『戦乙女ワルキューレ』の維持にも支障をきたしそうなほど磨耗していた。
あまりにも心臓に悪すぎたのか、その息はかなり荒い。
まあ、それはさておき。
四人(と一体)の出た枝には、一隻の凧フネが停泊していた。
見た目は帆船に近く、その舷側げんそくからは風を切るための皮翼が一対突き出ている。
上に伸びた枝から何本も伸びたロープは、錨いかりの役目を果たしているらしい。
ワルドたちのいる枝には、甲板へと続くタラップが設置されていた。
タラップを上り、四人が船上に現れると、甲板で蜜葱オニオン酒のボトルを片手に寝こけていた船員がうとましそうに身を起こした。
「……なんでえ? おめぇら」
「船長を呼んでくれ」
「寝てるぜ。用があるなら、明日の朝にでも改めて来な」
男は酔いに濁った目で答えると、ラッパ飲みで瓶の中身を空にした。
ワルドはすらりと杖を引き抜くと、息をついて口を拭う男の鼻先に突きつける。
「貴族に同じことを言わせる気か?
僕は、船長を呼べ・・と
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