違和感の交錯
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ただ、この術には厄介な欠点が三つもある。
一つ。
一度体を完全に"地中"から放り出した時点で効果が切れ、潜り直すには再び『遁行グランドダイブ』を唱えなおす必要があること。
二つ。
完全な個人用魔法であること。自分の体と身につけた物以外は、地中に引き込めないのだ。
これのお蔭で、こんな手間の掛かる方法で、標的ターゲット以外を行動不能に追い込まなくちゃいけなくなったわけだが。
そして三つ。
……これが致命的な欠陥なのだが、地中に潜行している間は、息をすることがまったく出来ないこと。
地中だから当然といえば当然なのだが、このため、一定間隔で酸素を補給しに地上へ顔を出す必要が――
(あづッ!?)
地上にかけようと伸ばした手が、強烈な熱に晒されて慌てて引き戻す。
息苦しさが増していく中、天井、もとい地上との境目をぐるりと見回す。
するとそこには大きく、真っ黒な円形に広がる影が、頭上にゆらめきながら存在していた。
(マズイ、火を放ったね、あいつら!
ど、どこか火の回っていないところは……)
そんな黒い円の中、よく目を凝らしてみると、一ヶ所だけ円影の途切れている場所があった。
代わりにそこには、手形や足形の影がいくつもある。
どうやら、待ち伏せているつもりらしい。
(そうは、いかないよ……)
『遁行グランドダイブ』は地続きならどこにでもいけるのだ。
もうあまり考える時間もないが、一端、連中の見えない所で呼吸を整えれば問題はない。
となると、一番近くて適しているのは……。
フーケは、その場所へと体を取り急いで泳がせた。
……ちなみに、仮面の男の忠告など完全に忘れてしまっていた。
まあ、これも酸欠のせいだったのかもしれない。
「出て……、こないわね」
ヴァリエールから『遁行グランドダイブ』の弱点を聞き、酸欠を狙ってギーシュに錬金で油をばら撒かせ、地面を燃やして、待つこと数分。
油が尽き、火は衰え始めたというのに、フーケは一向に現れない。
「ひょっとして、精神力が尽きちゃったんじゃない?」
「そうだとしたら、もう浮かんでは来ないだろうが……」
……もしそうじゃなくて、機をうかがってるだけだったら?
うかつに動くと、その瞬間に串刺しになる怖れがある。
困ったわね、と閉じられた『桟橋』の入り口に何気なく目をやった時……、
「え?」
ドカッ、ビシッ、ガラガラガラッと立て続けに破滅的な音を生み
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