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fate/vacant zero
違和感の交錯
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 盾つくえに身を隠もどした才人は、開口一番、タバサに謝った。


「なんか済し崩しに巻き込んじまって、ごめんな、タバサ」

「別にいい。囮はわたしの言い出したこと。自分が思うよう動けばいいと言ったのもわたし」


 そうタバサは呟くが、自然と眉が下がってしまっている。

 キュルケとギーシュが向こうに加わってしまって、人手が足りずに困ってる、のか?



「これからどうする?
 追い払うか、逃げまわるかしか選択肢がないのはわかってんだけど……」



 ……この中を逃げまわるのは無謀。

 そもそも、このパジャマでそういった機敏な行動はムリ。

 でも、追い払うのも二人では少し厳しい。


 せめてもう一人、魔法使いメイジが――



 タバサは2秒でそれらの考えを纏めると、ナイトキャップの裾野すそのと貫頭衣の襟元えりもとに手を突っ込んだ。


 ごそごそもぞもぞと手を動かしたタバサは、胸元に消えた左手には頼れる"武器"を、頭上に挿し込まれた右手には先日の木彫り人形を、それぞれ掴んで引き抜いた。

 その右手の人形を床に置き、左手のナイフを右親指に添える。



「な、なにやってんだ?」

「助っ人」


 タバサはそう呟くと、おもむろにナイフを引いた。

 当然ながら指の腹が切れ、血玉がじわっと膨らむ。

 それは重力に従って指先へと流れ、再び膨らんで人形にぽたりと垂れて。


 途端、才人は自分の目を疑う羽目になった。

 人形に落ちた血が吸い込まれたかのように薄れて消えたかと思うと、人形が見る間に膨れ上がったのだ。


 木目が薄れ、茶褐色が肌色へと呑みこまれ。

 やがてそれ・・は、タバサと寸分違わぬ姿へと変貌した。

 どういう仕組みかは分からないが、寝巻きまできっちり着込んでいる。



 ごしごしと瞼まぶたを擦ってみたが、見間違いというわけではない。

 これも魔法かと驚く才人をよそに、タバサは己の姿を映した人形――『物真似人スキルニル』に、左手に持ったままのナイフを手渡した。

 それを受け取ったタバサ(偽)は、ナイフを持った腕を上下左右に軽く振ったのち、にやりと口を歪ゆがめた。



「いや、なんというか……、考えたな嬢ちゃん」


 タバサの声でありながら、されどタバサではありえないぞんざいな言葉遣い。

 タバサにはあまりにもそぐわない、不敵な笑み。

 こういう雰囲気をしたタバサの関係者を、才人は一本ひとりしか知らなかった。



「お前、ひょっとしてシェルンノスか?」


「おう、ひょっとしなくてもシェルンノスだ。本体ナイフみりゃ分かるだろ?」



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