孤独の匂い
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港町ラ・ロシェールは、トリステインとアルビオンを繋ぐ航路の玄関口である。
人口はおよそ300ほどの小さな街だが、その街路は常に人口の十倍以上の航路を利用する人間で埋め尽くされている。
立派に立ち並ぶ旅籠はたごや商店の店舗は、一軒一軒がその細い峡谷の崖から彫り出されたものであり、近づいてみると地面と壁の間に繋ぎ目など無いことがよくわかる。
『土』系統の魔法使いメイジたちの、匠たくみの業わざであった。
そんな石造りの旅籠群の中でも一際大きな宿、表通りの『女神の杵』亭の一階の酒場で、ルイズとワルドを除のぞいた一行いっこうはくつろいでいた。
いや、才人とギーシュは死んでいた(比喩的な意味で)。
本来なら馬で二日掛かる道中を八分の五日ぐらいで駆け抜けさせられたので、体力が切れたらしい。
タバサは、いつも通りに本を読んでいた。
服装は相変わらず寝巻きの淡いグリーンの貫頭衣&ナイトキャップのままだったが、気にした様子もなく、黙々と読み耽っている。
実のところ酒場中から注目の的になっていたりもするが、やっぱり気にしていない。
キュルケは、そんなタバサを上目遣いに見ながらなにやら唸っていた。
さきほどは空気を読まないギーシュとワルドが先を促したことによって有耶無耶になってしまったのだが、キュルケはタバサの様子がどうも気にかかっていた。
才人に撫でられてる間、少しだけ口元や目元が緩んでいたような気がするのだ。
暗かったし、そのあと自分が才人の後ろに跨ってみても何か言ったり顔に出したりしたわけでもなかったので確証は持てない。
とはいえ、もともとタバサは自己主張の強い子じゃないし、あたしのこういう判断ってアテにならないのよね、とキュルケは溜め息をつく。
そもそも、タバサは自分がどんな表情をしていたかに気付いているのかどうかさえ怪しいわけで。
まずはそこを確かめるところからだろう。
タバサ自身が、自分の気持ちがどうなのか判断をつけるまではどうしようもない。
そこばっかりはキュルケが誘導したって意味はないのだし。
まあ、本気になったら手伝ってあげる、ぐらいに考えておいた方がいいのかしらね。
もともと、あたし自身は本気じゃないんだし。
ラ・ヴァリエールから恋人を奪うのは、これフォン・ツェルプストーの伝統であるからして、奪う手伝いをしてやるもまた伝統なり。
なんか違う気もするけど、これも友人の甲斐性ってことにしとけばいいわよね、とキュルケは結論づけた。
……良くも悪くも燃え上がりやすく冷めやすい少女は、い
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