駆け抜ける街道
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ってね」
そう言って笑うワルドに、少し動揺した。
「ねえ、ワルド。あなた、モテるでしょう?
なにも、わたしみたいなちっぽけな婚約者なんか相手にしなくたって……」
正直、ワルドのことは過日に夢を見るまで忘れていたのだ。
ルイズにとってのワルドは、現実の婚約者というよりも、遠い想い出の憧あこがれの人だった。
自分と結婚していらぬ風評をつけてしまうよりは、もっといい人を探して、幸せになって欲しい。
高みへと足掻くワルドを、わたしでは支えてあげられないのだと、そうルイズは思っていた。
己の才能の無さが、そんな想いに拍車をかけていた。
だから、婚約だってとうに反故ほごになったと思っていたのだ。
戯たわむれに二人の父が交わした、宛てのない約束だと、そのぐらいにしか思っていなかった。
十年前以来、ワルドにはほとんど会うことも無かったから、その記憶も遠く離れてしまっていた。
昨日ワルドを見かけたときにルイズが激しく動揺したのは、そのためだった。
想い出が突然、実体になって現れてしまい、どうしていいかわからなくなったのである。
「この旅は、いい機会だ。一緒に旅を続けていれば、またあの懐かしい気持ちになるさ」
ワルドは落ち着いた声でそう言ったが……、自分は、本当にワルドのことが、好きなのだろうか?
勿論、想い出の中では嫌いではなく、確かに憧れだった。
好き、であったとも思う。それは間違いがない。
でも、今は?
突然現れて、いきなり婚約者だの結婚だのと言われても、どうすればいいのかなんてわからない。
ルイズは、離れていた時間が、とても大きなものであるように感じていた。
「もう四半日以上、走りっぱなしだ。
どうなってるんだ。魔法衛士隊の連中は化け物か?」
ぐったりと馬に体を預けていると、隣を逝くギーシュが声を掛けてきた。
同じように、馬の首にぐったりと上半身を預けている。
「知らん。俺に聞くな」
返事をするのももはやかったるい。
おまけになんでか知らんが、ワルドがルイズに妙に密着しているのが、やけに気に障った。
あ、肩抱きやがった。
蓄瘴ちくしょう、二人して平気な顔していちゃつきよってからに。
こちとら腰どころか全身痛くて敵わねえってのに。
せめて見えねえ様にやりやがれってんだ。
ぶす、っと顔をギーシュの方に逸らすと、ニヤニヤした顔が目に映った。
「く、くく。もしかして、きみ……、妬いてるのかい
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