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fate/vacant zero
駆け抜ける街道
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恋人がいる、なんて聞いたらショックで死んでしまうからね」


 笑いながら言うワルドに、なんだかルイズは恥ずかしくなってしまった。

 照れ隠しが、半ば反射的に口から出てしまう。



「お、親が決めたことじゃない」

「おや? ルイズ! 僕の小さなルイズ! きみは僕のことが嫌いになったのかい?」


 昔と同じ、夢で見たように、おどけた口調でワルドがそう言った。



「もう、小さくないもん。失礼ね」


 ルイズは頬を膨らませた。

 ちょっと口の端が笑っているように歪ゆがんでいる辺り、たぶん楽しんでいるんだろう。



「僕にとっては、まだまだ小さな女の子だよ」


 ルイズは、ここまでの道中で、先日の夢を思い出していた。


 生まれ故郷、ラ・ヴァリエールの屋敷の中庭。

 忘れ去られた池の、小さな小船……。


 ワルドは、幼い頃そこで拗すねていると、いつも迎えにきてくれていた。



 親が決めた縁談、幼い日の約束、婚約者。

 あの頃は、その意味がよくわからなかった。


 ただ、憧れの人とずっと一緒に居られることだと教えてもらって、なんとなく嬉しかったことは覚えてる。


 今は、その意味もよくわかってる。

 結婚、するのだ。



「嫌なわけ、ないじゃない」


 少し照れたように、ルイズは言った。



「よかった。じゃあ、僕は好きかい?」


 ワルドは手綱を握った手で、ルイズの肩を抱いた。



「僕は、ずっときみのことを忘れたことはなかったよ。
 覚えているかい? 僕の父が、ランスの会戦で戦死して……」


 ルイズは、こくんと頷いた。それを受けたワルドが、思い出すようにしてゆっくりと語りだす。



「母もとうに死んでいたから、爵位と領地を相続して。それからすぐに、僕は街へ出た。
 立派な貴族になりたくてね。陛下は戦死した父のことをよく覚えていてくれたんだ。
 だからすぐに魔法衛士隊にも入隊できた。

 ……当然ながら、初めは見習いからでね。ずいぶん苦労したよ」


「ワルドの領地には、ほとんど帰ってこなかったものね」


 ルイズは、懐かしむように目を閉じた。


 ……あの頃、ワルドが来なくなってしばらくの間は、ずいぶん塞いでいたように思う。

 誰もあまり庇ってはくれなくなって、必死に勉強して……。



「軍務が忙しくてね。おかげで、未だに屋敷と領地は執事のジャン爺に任せっぱなしさ。
 僕は一生懸命奉公して、出世してきたよ。なにせ、家を出るときに決めたからね」


「なにを?」

「立派な貴族になって、きみを迎えにいく
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