駆け抜ける街道
[9/15]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
恋人がいる、なんて聞いたらショックで死んでしまうからね」
笑いながら言うワルドに、なんだかルイズは恥ずかしくなってしまった。
照れ隠しが、半ば反射的に口から出てしまう。
「お、親が決めたことじゃない」
「おや? ルイズ! 僕の小さなルイズ! きみは僕のことが嫌いになったのかい?」
昔と同じ、夢で見たように、おどけた口調でワルドがそう言った。
「もう、小さくないもん。失礼ね」
ルイズは頬を膨らませた。
ちょっと口の端が笑っているように歪ゆがんでいる辺り、たぶん楽しんでいるんだろう。
「僕にとっては、まだまだ小さな女の子だよ」
ルイズは、ここまでの道中で、先日の夢を思い出していた。
生まれ故郷、ラ・ヴァリエールの屋敷の中庭。
忘れ去られた池の、小さな小船……。
ワルドは、幼い頃そこで拗すねていると、いつも迎えにきてくれていた。
親が決めた縁談、幼い日の約束、婚約者。
あの頃は、その意味がよくわからなかった。
ただ、憧れの人とずっと一緒に居られることだと教えてもらって、なんとなく嬉しかったことは覚えてる。
今は、その意味もよくわかってる。
結婚、するのだ。
「嫌なわけ、ないじゃない」
少し照れたように、ルイズは言った。
「よかった。じゃあ、僕は好きかい?」
ワルドは手綱を握った手で、ルイズの肩を抱いた。
「僕は、ずっときみのことを忘れたことはなかったよ。
覚えているかい? 僕の父が、ランスの会戦で戦死して……」
ルイズは、こくんと頷いた。それを受けたワルドが、思い出すようにしてゆっくりと語りだす。
「母もとうに死んでいたから、爵位と領地を相続して。それからすぐに、僕は街へ出た。
立派な貴族になりたくてね。陛下は戦死した父のことをよく覚えていてくれたんだ。
だからすぐに魔法衛士隊にも入隊できた。
……当然ながら、初めは見習いからでね。ずいぶん苦労したよ」
「ワルドの領地には、ほとんど帰ってこなかったものね」
ルイズは、懐かしむように目を閉じた。
……あの頃、ワルドが来なくなってしばらくの間は、ずいぶん塞いでいたように思う。
誰もあまり庇ってはくれなくなって、必死に勉強して……。
「軍務が忙しくてね。おかげで、未だに屋敷と領地は執事のジャン爺に任せっぱなしさ。
僕は一生懸命奉公して、出世してきたよ。なにせ、家を出るときに決めたからね」
「なにを?」
「立派な貴族になって、きみを迎えにいく
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ