駆け抜ける街道
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老は目論んだ。
「そうですじゃ。
この世界ハルケギニアではない、どこか。
そこからやってきた彼には、何かをやり遂げることが出来る、不思議な……、そう、魅力とでもいうようなものがあると、この老いぼれは信じておりますでな。
余裕の態度も、そのお蔭によるものが大きいのですじゃ」
「そのような世界があるのですか……」
うまく誤魔化せた、と内心で額の汗を拭いているオスマン老をよそに、アンリエッタは己の左手を見つめた。
その少年の唇の感触が、まだそこに残っている。
アンリエッタは片手でその指をなぞり目を瞑ると、一転して顔を綻ほころばせた。
「ならば祈りましょう。異世界から、吹く風に」
さて、魔法学院を出発してかれこれ六時間が経つ。
この間、ワルドは獅鷲グリフォンを疾駆させっぱなしだった。
才人たちは二回ほど、途中の駅で馬を交換したのだが、ワルドの獅鷲グリフォンは疲れの片鱗すら見せずに走り続けている。
なんというか、乗り手に似て素晴らしくタフなヤツだった。
「ちょっと、ペースが速いんじゃない?」
抱かれるような格好でワルドの前で跨っているルイズが、後ろを振り向きながら言った。
雑談を交わすうち、ルイズの喋り方は過去むかしのような丁寧なものから、現在いまの口調へと変わっていた。
まあ、主にワルドがそうしてくれと頼んだせいではある。
「ギーシュもサイトも、へばっちゃってるわ」
そう言われて、ワルドは後ろを向いた。
二人は、首に倒れこむような格好で馬にしがみついている。
確かに、今度は馬より先に、二人が参ってしまいそうだった。
「ラ・ロシェールまで、出来れば止まらずに抜けたいんだが……」
「無茶よ。普通は馬で二日かかる距離なのよ?」
「へばったら、置いていけばいい」
「そういうわけにはいかないわよ」
ワルドが、少し怪訝けげんな顔になった。
「どうして?」
「どうして、って……」
今度はルイズが、少し困った顔になった。
「だって、仲間じゃない。それに、使い魔を置いていくなんて貴族メイジのすることじゃないわ」
「やけにあの二人の肩を持つね。どちらかがきみの恋人かい?」
ワルドは、笑いながら言った。
ルイズの眉が、一気に吊り上がり、顔が赤く染まる。
多分、怒りで。
「まさか! 恋人なんかじゃないわよ!」
「そうか、それはよかった。婚約者に
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