駆け抜ける街道
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ないからだ。
「門番の話によれば、さる貴族を名乗る怪しい人物に『風』の魔法で気絶させられたそうです!
魔法衛士隊が王女のお供で出払っている隙に、脱獄の手引きをした者がおるのですぞ!
城下に裏切り者がおるのです!
これが一大事でなくてなんだというのですか!」
アンリエッタの顔が、気の毒なくらい蒼白になった。
「わかったわかった。その件については、後で聞こうではないか」
オスマン老はそう言うと、コルベールに手を振って退室を促した。
ばたりとドアが音を立ててコルベールが退室すると、アンリエッタは机に手をつき、溜め息をついた。
「城下に、裏切り者が?
……間違いありません。アルビオン貴族の暗躍ですわ!」
「そうかもしれませんな。あいだっ!」
オスマン老は、どうやら鼻毛を抜き損ねたらしい。
そんな様子を、アンリエッタは呆れ顔で見つめた。
「トリステインの未来がかかっているのですよ。なぜ、そのような余裕の態度を……」
「なに、既に杖は振られているのです。我々には待つことしか出来ない。
そんな時は、慌てれば慌てるだけ部下は不安になる。違いますかな?」
「確かに、そうですが……」
どこか不満顔のアンリエッタに、オスマン老は続けた。
「それに彼ならば、道中どんな困難があろうとも、必ずやり遂げてくれますでな」
「彼、とは? あのグラモン家の子弟が? それとも、ワルド子爵が?」
そのどちらでもないと、オスマン老が首を横に振る。
「ならば、あのルイズの使い魔の少年が?
まさか! 彼は、ただの平民ではありませんか!」
そういうアンリエッタに、にやり、とオスマン老は悪戯小僧のように笑ってみせた。
「姫は始祖ブリミルの伝説をご存知かな?」
「通り一遍のことなら知っていますが……」
「ではその使い魔の件くだりはご存知か?」
「始祖ブリミルの用いた、最強の使い魔たちのことですか?
――まさか、彼がそうであると?」
そこまで喋って、ようやくオスマン老は自分がマズイところまで喋ってしまったことに気付いた。
アンリエッタが信用できないわけではないが、王室のものに『ガンダールヴ』の再誕を話すのはまだ早すぎる、と。
「おほん。
とにかく彼は、かの使い魔なみに使えると、そういうことです。
ただ、彼は異世界より訪れた少年でして」
「イセカイ、ですか?」
アンリエッタは、唐突に飛んだ話題についてこれていないようだ。
今の内にたたみかけて誤魔化そう、とオスマン
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