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fate/vacant zero
駆け抜ける街道
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さっと薔薇の造花、杖を掲げた。

 否いや、掲げようとした。


 それより一瞬早く杖を引き抜いた羽帽子の貴族が、見えない何かで造花を弾き飛ばし、模造の花びらを宙に散らした。

 今のは……、『風』、か?

 さっと慣れた手つきで杖を腰に納めると、そいつは口を開いた。



「僕は敵じゃない」


 と。


 今の行動のどの辺りが敵じゃないのかと胡散臭そうに見ていたら、苦笑しながら言葉を続けられた。

 ……なんかむかつくのはなんでだ?



「姫殿下より、きみたちに同行することを命じられてね。
 どうも姫殿下は、きみたちだけではやはり心許無こころもとないらしい。
 かといってお忍びの任務に一部隊つけるわけにもいかぬ。そこで僕が指名されたというワケだ」


 長身の貴族は帽子を取ると、優雅に一礼しやがった。



「女王陛下の魔法衛士隊、獅鷲グリフォン隊隊長のワルドだ」


 ソレを聞いた、隣で憤慨していたギーシュが、相手が悪いと悟ったのか意気消沈して項垂うなだれた。

 ワルドはそんなギーシュの様子を見て、謝ってきた。



「すまない。婚約者がモールベアに襲われているのを、見てみぬ振りはできなくてね」


 なるほど、そりゃ仕方ないか。



 そう納得しかけて、思考がフリーズした。



 いま、こいつは、なんといった?

 コンヤクシャ?



「ワルドさま……」


 立ち上がったルイズが、震える声で言った。


 婚約者?



「久しぶりだな! ルイズ! 僕のルイズ!」


 僕の、と来たか!

 つまり婚約者ってフィアンセ!?


 って当たり前だ落ち着け俺! 壊れんなゴメンムリ言った俺。



 そうして俺が壊れている内に、ワルドは人懐っこい笑みを浮かべてルイズを抱え上げていた。

 ルイズは頬を染め、大人しくワルドに抱きかかえられている。



「お久しぶりでございます」

「相変わらず軽いなきみは! まるで羽のようだね!」


「……お恥ずかしいですわ」



 いかん、なんか砂糖吐きそうだ。

 あめぇ。

 なんだこの空気。


 なに、あのルイズの目。

 すげえ潤んでる。なにあれ。



 ざーっ、と砂糖を吐く真似というかフリをしていたら、ワルドがルイズを地面に降ろして、気まずげにこっちを振り向いた。

 今さら帽子を目深にかぶりなおしてもおせえ。



「彼らを、紹介してくれないか?」

「あ、あの……、ギーシュ・ド・グラモンと、使い魔のサイトです」


 ルイズは俺たちを交互に
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