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fate/vacant zero
駆け抜ける街道
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 ルイズが獅鷲グリフォンから飛び降りて、キュルケに怒鳴った。


「助けにきてあげたんじゃないの。
 朝方、起き抜けに窓から外を見てたらあんたたちが馬に乗って出かけようとしてたもんだから、急いでタバサを叩き起こして後をつけたのよ」


 キュルケは風竜の上のタバサの方を親指で指した。

 ルイズはキュルケの方をガン見していたので、意味は無いが。



「ツェルプストー。あのねぇ、これはお忍びなのよ?」

「お忍び? だったらそう言いなさいよ。言ってくれなきゃわかんないじゃない。
 とにかく、感謝しなさいよね。あなたたちを襲った連中を捕まえたんだから」


 キュルケは倒れた男たちを指差した。怪我をして動けない男たちは口々に罵声を浴びせかけてきている。いつのまにかギーシュがそいつらに近づいて尋問を始めていたりもした。

 ルイズは腕を組むと、キュルケを睨みつけた。



「勘違いしないで。あなたを助けに来たわけじゃないの。ねえ?」


 そう言ってキュルケはしなを作り、獅鷲グリフォンに跨るワルドへにじり寄った。



「おひげが素敵ね。あなた、情熱はご存知?」


 ワルドはちらっとキュルケを見て、左手で押しやった。



「あらん?」

「助けは嬉しいが、これ以上近づかないでくれたまえ」


「なんで? どうして? あたしが好きって言ってるのに!」


 取り付く島のないワルドの態度に、キュルケは混乱した。

 キュルケは今まで、男にこんな冷たい態度を取られたことはなかった。

 どんな男も自分に言い寄られれば、動揺の色ぐらいは見せたものである。

 しかし、ワルドにはそれがない。自分の理解を超えたワルドを、キュルケはあんぐりと口をあけて見つめた。



「婚約者が誤解するといけないのでね」


 そう言ってルイズを見つめるワルド。ルイズはそれを受けて、湯気が出そうなほど顔が熱くなる。



「なあに? あんたの婚約者だったの?」


 キュルケがつまらなそうに言うと、ルイズの代わりにワルドが頷いた。

 ルイズが困ったようにもじもじし始めたのは無視し、キュルケはワルドを見つめた。



 遠目では分からなかったが、目が冷たい。なんだか氷のようだ。

 キュルケは鼻を鳴らした。なにこいつ。つまんない、と思った。


 それから才人を見ようとして、目が点になった。


「ねえ……、サイト?」

 なでなで。

 キュルケが、震える声で話しかけてきた。

 なでなで。

「ん? どした?」

 なでなで。

「あなた、いったいいつの間にタバサとそんなに仲良くなったの?」


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