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fate/vacant zero
駆け抜ける街道
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ドが呟く。



 『風』の魔法を使って、ばっさばっさと音を立てるような生き物を連れてる"味方"。

 そんな奴、俺は一人しか知らない。


 がらんごろんと弓を持った男たちが崖から転がり落ちるのも、体を打ちつけた呻うめき声も気に留めず、それを為した心強い味方の登場を、空を見上げて待つ。

 やがて、松明たいまつに照らされながら現れた見慣れた幻獣に、ルイズが驚きの声をあげた。



「シルフィード!?」


 予想通りというべきか。ばさばさと地面に降りたドラゴンから、赤い髪の……、ってか、キュルケがぴょんと飛び降りて髪をかきあげた。

 俺はそっちをスルーして、ドラゴンの方に近づく。


「やっぱお前だったのか、タバサ……、って。なんだその格好?」


 ドラゴンの上には、何故だかナイトキャップに貫頭衣を被った、どう見てもパジャマ姿のタバサが居た。

 流石に月が出てないと本は読めないらしく、持っていない。

 そんなタバサは、無言のままキュルケを指差した。


 ああ、寝起きを叩き起こされて着の身着のまま連れ出されたのね……。

 つくづく思うんだが、本当に友だちなのか、お前らは。

 なんか、見てる限り良いように使われてるようにしか思えないんだが。


 ……なんか無茶苦茶言ってるなぁ、キュルケ。思わず苦笑してしまう。

 まあ、確かに感謝はしないといけないよな。主にタバサに。



「ありがとな、また助けに来てくれて。
 ……なんかお前には、いつも助けられてばっかだなぁ」

 かなり男としての自信が、がらがらと。

 ワルドとの相乗効果で面白いくらい崩れていってるのがわかる。



「気にしなくていい。それにわたしも、少し興味はあった」


 いや、そういう問題でもねえんだけどな。俺のプライドの問題なんだし。



「まあ、なんか困ったことがあったらいつでも言ってくれよ。
 手伝いに行くからさ」

 なでなで。

「別に、いい」

 なでなで。

「そういうなって。俺の一個借りってことにしといてくれ」

 なでなで。

 そう言ったらなんだかピクリとして、目を見開いて固まってしまった。

 なでなで。

 そんな様子を見て、再確認した。

 やっぱこいつ、挙動が一回一回やたら可愛い。

 なでなで。

 なでなで。

 少しの間の後、硬直から復帰したタバサが、ぽつりと呟いた。



「……わかった」


 うん、よかった。これで断られたらどうしようかと思ったぞ。

 なでなで。
「お待たせ」

「お待たせ、じゃないわよッ! いったい何しに来たのよ!」


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