駆け抜ける街道
[11/15]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
?」
「あん? そりゃ、どーいう意味だよ?」
「そのままの意味に決まってるだろう? もしかして図星かい?」
ニヤニヤがいっそう濃くなった。
「黙ってろ、鬱陶うっとうしい」
「く、くくく。ご主人様に、叶わぬ恋でも抱いたのかい?
いやはや! 悪いことはいわないよ。身分の違う恋は不幸の元だぞ?
しかし、君も哀れだな!」
「ちげえよ。なんだってあんな性格最悪なヤツを。俺が好きなのはな……」
……ん?
俺が好きなのは……その後、なんて繋ぐんだ?
はて? と体を預けたまま首を傾げていると、いつの間にか前を向いたギーシュが驚いた声をあげた。
「あ、キスしてる」
なぬ!?
ばっ、と前を向いた。
目を凝らしてみたが、二人はキスなんぞしていない。
ぷーっくすくすくすと声がしたのでそちらを見ると、ギーシュが笑いをこらえていた。
軋む上半身を無理やり起こし、馬を少し加速させてやった。
慌てた様子でついてきたギーシュを見やり、ざまぁ、と思いながら再び馬の背に倒れこんだ。
馬を幾度となく替えて飛ばしてきたお蔭で、なんとか日が変わる前にはラ・ロシェールの入り口に着いた。
と、ワルドは告げたんだが。
左を見ても、右を見ても、前を見ても、どっからどうみてもここは山道だ。
港町、っていうからには海が近くないと変なんじゃねえかと思うんだが。
この山の向こうが海、なんだろうか?
そう思ってしばらくの間、険しい岩山を縫うように進んでたんだが。
遠く道の向こう、崖に挟まれるように佇む、岩から削りだしたみたいな街の灯りを見る限り、それは無さそうだった。
「なんで港町なのに山なんだよ?」
「きみは、アルビオンを知らないのか?」
独り言のつもりだったんだが、間髪入れずにギーシュが呆れた声で返事してきた。
なんか、この道中ですっかり馴染んじまったなぁ、このやりとり。
「知らねえよ」
「まさか!」
ギーシュは一笑にふしたが、笑い事じゃないんだよな。
「ここの常識を、俺の常識と思ってもらっちゃ困るぞ」
そう言った時だった。
突然、崖の上からこっちに目掛けて、火の点いた松明たいまつが何本も投げ込まれた。
地面からの灯りに、俺たちの姿が照らし出される。
って冷静に見てる場合じゃねえ!
「なんだ!?」
乗っていた馬がいきなり前足を高々と振り上げ、その拍子に体が地面
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ