いつかの面影
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「ああ……! ルイズ、ルイズ、懐かしいルイズ!」
ルイズの部屋を訪れてきたアンリエッタ王女は、感極まった表情を浮かべ、膝をついたルイズに抱きついた。
「姫殿下、いけません。こんな下賎な場所へ、お越しになられるなんて……」
ルイズは、相変わらず膝を着いてかしこまった顔のままだ。
……いや、ちょっと口元と眉が下りてるかも。
「ああ! ルイズ! ルイズ・フランソワーズ! そんな堅苦しい行儀はやめてちょうだい!
あなたとわたくしはおともだち! おともだちじゃないの!」
「もったいないお言葉でございます。姫殿下」
硬く緊張しているルイズと、そんなルイズにぺっとりと張り付いている王女を見比べながら、才人は目を点にしていた。
お姫さまがルイズと友だちだって?
こんなおしとやかそうな子とルイズが?
…………想像できねえんだけど。
「やめて!
ここには枢機卿も、母上も、あの友達面をして寄ってくる欲の皮の突っ張った宮廷貴族たちもいないのですよ!
ああ、もうわたくしには心を許せるお友達はいないのかしら。
昔馴染みの懐かしいルイズ・フランソワーズ、あなたにまでそんな態度を取られたら、わたくし絶望で死んでしまいそうよ!」
「姫殿下……」
ルイズが、困った面持ちで顔を挙げる。
な、なんってか、大げさな人だなこの姫さま。
「幼い頃、宮廷の中庭で一緒になって蝶を追いかけたじゃないの! 泥だらけになって!」
「……ええ。お召し物を汚してしまって、侍従のラ・ボルト様に叱られました」
ルイズが、はにかんで答えた。
あれ、意外に活発な幼少の砌みぎり?
「そうよ! そうよルイズ!
ふわふわのクリーム菓子を取り合って、つかみあいになったこともあるわ!
ああ、ケンカになると、いつもわたくしが負かされたわね。
あなたに髪の毛を掴まれて、よく泣いたものよ」
「いえ、姫さまが勝利をお収めになったことも、一度ならずございました」
ルイズが心外だと眉を顰め、かつ懐かしそうに口元に笑みを浮かべて言う。
……ぇーと。
「思い出したわ! わたくしたちがほら、アミアンの包囲戦と呼んでいるあの一戦よ!」
「姫さまの寝室で、ドレスを奪い合ったときですね」
なんじゃそりゃ、と才人はツッコミを入れたい衝動に駆られた。
どうもこのおしとやかに見えたお姫さまは、前髪で目が隠れた悪友を彷彿ほうふつとさせてくれるお転婆てんば娘らしい。
「そうよ、『宮廷ごっこ』の最中、どっちがお姫さま役をやるかで揉め
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