森に響く凱歌
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時刻は、昨夜ゆうべ草原に即興で発生した土山が、黄金色の洗礼を受けようとする頃。
トリステイン魔法学院は、蜂の巣をつついたような喧騒に覆われていた。
難攻不落のはずの宝物庫がたかが・・・盗賊に壁をぶち破られた上、秘宝『破壊の杖』が盗難されたことに、ようやく教師たちが気付いたのであった。
宝物庫には空が白みだした頃から学院中の教師たちが集まり、壁に空いた大きな穴に呆気にとられていた。
……しかしあれだけ派手に音を立てていたというのに、夜中に目を覚ました者は誰か居なかったんだろうか?
Fate/vacant Zero
第九章 森に響く凱歌
宝物庫の壁には、最後にフーケが刻んでいったサインが残されていた。
『破壊の杖、確かに領収いたしました。土塊のフーケ』と、これまでの被害者たちに対するものと何ら変わらないものである。
これを発見した教師たちは、目撃者としてこの場に呼ばれたルイズたちのことも忘れ、好き勝手に罵声を喚き散らしている。
「土塊のフーケ! 貴族たちの財宝を荒らしまくっているという盗賊か!
魔法学院にまで手を伸ばすとは、随分とナメられたもんじゃないか!」
「衛兵はいったい何をしていたんだね?」
「衛兵など当てになるものですか! 所詮しょせんは平民ではないですか!
それよりも、当直の教諭メイジはいったい誰ですか!」
神経質そうな女性教諭の金切り声を聞いたシュヴルーズ先生は震え上がった。
実は昨晩の当直は彼女だったのであるが、こんな事態になるとは夢にも思っていなかった。
本来なら、門の詰め所で夜を徹しての待機をしていなければならないのだが、彼女はいつものように当直をサボり、ぐうぐうと自室で寝ていたのである。
「ミセス・シュヴルーズ! 当直はあなたではありませんでしたか!」
集まった教師の一人が、さっそくシュヴルーズ先生を追求し始めた。
オスマン老の来る前に、責任の所在を明らかにしておこうということだろう。
その教師に、才人は見覚えがあった。彼の『風』の授業に、何度か参加したことがある。
ボールを探しに行かされた授業のことなどは未だに明確に覚えている。……過度の疲労で。
確かギトー教授……あ、いや先生だったか、と名前を記憶から掘り起こした。
彼の鋭い眼差しに射抜かれたシュヴルーズ先生は、ボロボロと泣き出してしまった。
「も、申し訳ありません……」
「泣いて謝ったところで、秘宝は戻って来ませんぞ! それともあなた
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