森に響く凱歌
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ん」
「この非常時に、いったいどこに行ったのじゃ」
「さて?」
まあ、噂をすれば影、とはよく言ったもので。
二人が首を傾げたとき、教師たちの後ろからミス・ロングビルが宝物庫へと入ってきた。
「ミス・ロングビル。いったいどこへ行っておったのかね? この非常時に」
オスマン老がそう尋ねると、ミス・ロングビルはやわりとオスマン老に告げた。
「申し訳ありません。朝から、急いで調査をしておりましたの」
「調査とは?」
コルベールが、不思議そうに尋ねてきた。
「ええ。今朝方、起きだしてみたら大騒ぎになっているじゃありませんか。
そして宝物庫はこのとおりの惨状で。
中を見てすぐに壁のフーケのサインを見つけたもので、これがかの大怪盗の仕業と知り、すぐに調査をいたしました」
「仕事が早いの、ミス・ロングビル。それで、結果は?」
「はい。フーケの居所らしき情報が手に入りました」
「な、なんですと!?」
素っ頓狂すっとんきょうな声がコルベールから上がった。
「いったい誰に聞いてきたんじゃね、ミス・ロングビル」
じっとミス・ロングビルを見据えながら、オスマン老がさらに尋ねる。
「はい。近在の農民に聞き込んだところ、今朝早くに近くの森の廃屋の方へと消えた黒ずくめのローブの男を見たそうです。
おそらくその男がフーケで、廃屋はその隠れ家なのではないかと」
オスマン老の目が鋭く細まる。
「その廃屋は近いのかね?」
「はい。徒歩で三時間、馬で一時間といったところでしょうか」
「すぐに王室に報告しましょう! 兵隊を差し向けてもらわねば!」
コルベールの叫びに、オスマン老は目を剥いて怒鳴った。
老人とは思えぬほどの気迫がこもっている。
「ばかもの、王室なんぞに知らせている間にフーケは逃げてしまうわ!
第一、身にかかる火の粉も払えんで何が貴族じゃ!
魔法学院の宝が盗まれた以上、これは魔法学院の問題じゃ! 無論、我らで解決する!」
オスマン老はそこまで一気にいうと咳払いを一つした。
「では、捜索隊を編成する。我こそと思う者は、杖を掲げよ」
だが、教師たちは誰も杖を掲げなかった。
困ったように、顔を見合わせるばかりだ。
いや、約二名ほどは自分の爪先を見て何事か考え込んでいるようだが。
「おらんのか? ん? どうした! フーケを捕まえ、名を挙げようと思う貴族はおらんのか!」
その一声で、動いた者がいた。
だが、それは教師ではない。
「ミス・ヴァリエール
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