森に響く凱歌
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「……え!?」
今度は、ただ単純に振り下ろしてみるが……、やっぱり何も起こらない。
『破壊の杖』は沈黙したままだ。
「これ、ほんとに魔法の杖なの!?」
もしこれが魔法の杖ではなく魔法道具アーティファクトだとしたら、使用するためには何かしらの条件があるはずなのだけれど……、いったいどうすればいいんだろう?
なにやってんだ、あのはねっかえりは!?
左後方、いきなり宙から降ってきた自分の主人を見て、才人は内心舌打ちをしていた。
ドラゴンの上で大人しくしていればいいものを、と。
先ほどからナイフに手伝ってもらっていろいろと試してはいるものの、そのいずれもロクに効いたようには思えない。
というか、そもそも『風』系統以外の魔法はまともに発動もしてくれなかった。
使った瞬間に霧散したり、砕け散ったりしやがったのだ。
素人の『風』で玄人プロの土人形ゴーレムに致命傷が入るわけも無く、先ほどからは『どう倒すか』ではなく『どう逃げるか』に思考がシフトしつつあったのだ。
それを――、と罵る言葉に続くはずだった思考は、ナイフの言葉で一転する。
「おい小僧。あの小娘の持ってる筒はなんだ?」
筒?
ルイズの腕の中を凝視して……、小躍りしたくなった。
ナイスだ、ルイズ! と先の思考に繋げて、腕の中でそれを持ち替えながら振りまくっているルイズめがけてかくりと曲がり、ひた走る。
アレを使えば、この土人形ゴーレムを倒せるかもしれない。
才人の思考は、逃げまわる中でどうやら酸欠を起こしたらしい。
優先順位が間違っていることに、既に気付きもしなくなっていたが……、まあ、この場の誰もがそれに気付かなくなっていたので、問題ないのだろう。
「サイト!」
自分の名を叫ぶルイズの手から、『破壊の杖』を強奪する。
その瞬間、ルーンが面白いように光り、脳内に奇妙なイメージが生まれた。
「使い方が、わかんないのよ!」
使い方か? ああ、それなら大丈夫だ。
「これはな、こう使うんだよ」
「へ?」
呆気に取られたルイズは放置して、ナイフをズボンと体の間に挟み、『破壊の杖』から安全ピンを引っこ抜く。
視覚より一歩手前の感覚内に突然現れた使用説明書・・・・・もどきと照らし合わせつつ、後部のガス噴射口カバーを開き、点火装置であるインナーチューブをスライドして引き出し、カチッと言わせる。
この目に見えない説明書きみたいな感覚もルーンの効果なんだろうか
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