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fate/vacant zero
森に響く凱歌
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すことに成功したモノは、紛れも無く、


「『風槌エアハンマー』……! どういうこと!?」


 なぜ、平民のはずのサイトが、魔法を使えるの!?

 そもそも、杖はいったいどうしたの!?


 疑問が群れになって湧き上がる中、タバサが説明をしてきた。


「さっき渡した、あのナイフの効果。
 あれを持っていれば、四つの系統の魔法は最低でも『ライン』クラスぐらいまでなら使いこなせる」



 ――なによ、その反則技。

 っていうか、ご主人様を差し置いてなに魔法なんか使っちゃってんのよ、あいつ。


「ただ……」


 あによ。


「今日は、ナイフの調子が悪い」





 ――え゙?



 潰れた蛙みたいな声を脳内で響かせつつ眼下に向き直ると、そこには再び追い回されて逃げまわるサイトの姿があった。


「サ、サイト!?」

「威力が、本当に『ライン』クラスしか出てない。アレでは、倒せない」


 やや焦った感のあるタバサの声で、本当に余裕が無いのだと知る。



 なんとか、自分がサイトを手助けすることは出来ないものか。

 たとえば、なにか強力な『武器』とか……あるわけがないではないか。


 取りとめもない考えに陥りつつある自分を叱咤し、もう一度タバサの方を振り向いて……。



 強力な、『杖』を見つけた。


「タ、タバサ! それよ、それ! 『破壊の杖』よ!」


 ぴくっ、とタバサの表情が変わった。

 主に目が。

 きょとん、って感じに。


「貸して!」


 タバサが差出してきた『破壊の杖』を受け取る。


 今までに見たことの無い形をした魔法の杖だ。

 筒のようなぶっといコレが使えるかどうかはわからない。


 でも、少なくとも自分の魔法よりは当てにすることが出来る。


 というか、今はこれ以外に頼れそうな物は無い。



 サイトの位置を確認する。

 ばかすかと魔法を振りまきながら逃げているのを見ると、どうも胸に痛みが走るのだが、いまはそんなことは気にしていられない。


「タバサ! わたしに『空中浮遊レビテーション』をお願い!」


 そう怒鳴り、間髪入れずに宙へと身を躍らせる。

 半分ぐらい落ちたところで、ふわりとした感覚に包まれた。

 『空中浮遊レビテーション』が掛かったらしい。


 ゆっくりと地上へ落ちていく中、サイトが戦っている土人形ゴーレムを見据え、『火球ファイヤーボール』の呪文ルーンを呟いて。


 『破壊の杖』を、振り抜いた。







 何も起こらない。
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