土塊つちくれの巨人
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ら火球は迸らず、本塔の壁を爆発させ、深く抉った。
そう、まるで『抵抗レジスト』など掛かっていないかのように。
では、わたしが読み違えたのか?
あの壁には、『抵抗レジスト』などなかったとでも?
いや、そんなはずはない。
二人目の少女が唱えた矢の如き『火球ファイヤーボール』は、ロープを射ち抜いた後、間違いなく『抵抗レジスト』にかき消されていたのだから。
ならば……、あの魔法は、いったい?
いや、今はそれより、宝を優先しよう。
今がチャンスだ。あれだけ抉れた壁ならば……。
フーケは、いつもの呪文を詠唱する。
長く、強く、細やかに。
魔力を、精神力を紡いでゆく。
己の誇る、最強の力を。
"土塊"を生む魔法を、30秒近い時間を掛け紡ぎだした。
後は簡単。
"材料じめん"に向かって杖を振り下ろし……、はたしてそれは生み出された。
轟音と土埃を盛大に巻き上げながら。
ちょっと可哀想だな、というのが先の勝負についての才人の感想だった。
高笑いするキュルケの隣、ルイズは膝をついたまま肩を落としてしょんぼりしていた。
ぁ、草抜いてる。暗い。
どうしたもんかね、これから。
ルイズはルイズで心配だったのだが、とりあえずは自分の身の回りを片付けてからにしたかった。
「……なあ、そろそろロープほどいてくれねえか?」
かなりきつくぐるぐる巻きにされてて動けねえんだけど。
具体的には肩の下辺りから踝くるぶしぐらいまで。
にっこり微笑んだキュルケが、喜んで、と跳ねるような歩みで近寄ってきて。
――視線の先、キュルケの背後から聞こえてきた、"どどどど"という轟音と共に固まった。
なにごと? と振り返るキュルケの視線の先。
そして、動かない体で俺が見ているもの。
音源が、地面から生えてきていた。
「な、なにこれ!?」
そりゃ俺が聞きたい。なんだよ、あれ。
生えた土の柱が、こっちに向かって迫ってくる。
ずしん、ずしんと音を立てる二本の柱。
キュルケが、『火球ファイヤーボール』を柱の上に向かって飛ばし……、その全貌が照らし出された。
最初は、壁かと思った。
あまりにもでかい。
その壁からは、下に2本、左右に1本ずつ柱がはえていて。
壁の上のほうに並んで空いた、二つの丸くて暗い穴を見て、ようやくそれが何であるかに思い至る。
――土人形ゴーレム
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