土塊つちくれの巨人
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不明。背格好さえも不明。
ただ分かっているのは、『土』の『トライアングル』ないし『スクウェア』だろうということ。
犯行現場の壁に、『秘蔵の○○、確かに領収いたしました。土塊のフーケ』という戯ふざけたサインを残していくこと。
そして……、強力な魔法が付与された数々の高名なお宝、"魔法道具アーティファクト"に目がないということだけであった。
Fate/vacant Zero
第八章 土塊つちくれの巨人ゴーレム
今宵は新月。
満天の星空をバックに聳そびえる本塔は、地上から見上げる分には、完膚なきまでに夜に染まっていた。
そんな漆黒の外壁、地上数十メイル地点。
灯あかりもなしに大地と平行に佇む、あからさまに怪しい――見えればの話だ――影が一つ。
土塊つちくれのフーケが、そこに姿を現していた。
見えてはいないから現したといえるかどうかは怪しいが。
長く碧あおい髪を夜風になびかせ悠然と佇む様からは、国中の貴族を不眠と落涙の坩堝るつぼに叩き込んだ怪盗の風格が見受けられただろう。
見えれば。
さて、そんな当のフーケはというと、足から跳ね返ってくる壁の感触に何やら苦りきった気配を撒いていた。
「さすがは魔法学院本塔の壁……。物理的な力が有効だって?
冗談じゃない! こんな分厚い壁、ぶち抜いたら塔の方が先に崩れちまうじゃないか!」
コツ、コツと壁を踏みつつ、足に返る振動と音で、壁の厚さを測っている。
『土』のエキスパートであるフーケにしてみれば、この程度のことは雑作もない。
「確かに、『抵抗レジスト』以外の魔法は掛かってないみたいだけど……、これじゃ私のゴーレムでも易々とは貫けそうにないね……」
さて、どうしたものか。
フーケは、予想以上の難敵に頭を悩ませていた。
ここの『抵抗レジスト』はかなりの高レベルで掛かっているらしく、『錬金アルケミー』の魔法で壁を変化させることが出来ない。
かといって、現状の手札ではこれほど頑強な壁を打ち抜くことは出来ない。
扉から真正面などもってのほかだ。上にも下にも逃げ道がない。
「たったのこんだけ調べるのに、かれこれ一ヶ月も費やしてるんだ。
『破壊の杖』、なんとしても奪わせてもらうよ」
腕組みをしたまま思考回路を回し続けるフーケの双眸が、きらりと光った。
さて、その頃。
ルイズの部屋では、ちょっとした騒動が巻き起こっていた。
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