王都トリスタニアの休日
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ルイズのダメ押しに折れた店主はぺこりと頭を下げると、才人の腕からレイピアをひったくって奥へと消えた。
小さく「素人が!」と呟いたのはやっぱり気付かれなかった。
また少し経って、今度は立派な剣を油布で拭きながら店主が現れた。
「これなんかいかがです?」
才人はそれを受け取ると、再び鞘から引き抜いてみた。
「店一番の業物でさ。貴族のお供をさせるなら、このぐらいは腰から下げてほしいものですな」
それは、刀身1.2メイルmはあろうかという両手剣クレイモアだった。
柄つかは両手で扱うため長めに作られており、柄尻つかじりには虹色に輝く乳白色の宝石がおさまっている。
鍔つばは三角錐を横倒しにして二つ重ねたような形状をしている。その両端は細く鋭い。
「といっても、こいつを腰から下げるのはよほどの大男でないと無理でさぁ。やっこさんなら、背中にしょわんといかんですな」
所々に宝石の鏤ちりばめられた柄つかも鍔つばも見事な一品だったが、目を引いたのはそちらではない。
その刀身は鮮やかな青色をしており、自分の顔がくっきり映り込むほどに磨き抜かれていた。
表面には無数のラインが走っており、それが何かの幾何学模様を形成しているようにも見える。
そして何より、持った瞬間に得られたイメージが凄まじい。
ダイヤモンドすらも切り裂いてみせる、そんな靭つよさが感じられたのだ。
「すげえ。この剣、すげえよ」
面白い、というより、魅入られた。
これは、欲しい。
ルイズのほうを見て、激しく頷く。
ルイズはそれを見て、サイトが気に入ったというのならこれでいいだろうと了承した。
店一番と親父が太鼓判を押したのも気に入った。
貴族はとにかく、"一番"が大好きだ。
「おいくら?」
「こいつを鍛えたのは、かの高名なゲルマニアの"錬金魔術師"シュペー卿で。
魔法がこめられてるから、鉄だって粘土なみに一刀両断でさ。
ごらんなさい、鍔の所にその名が刻まれているでしょう? おやすかあ、ありませんぜ」
そうのたまう主人の指先を見れば、なるほど、確かに何か文字っぽいものが刻まれている。読めねえけどな。
「わたしは貴族よ」
胸を張るルイズって、味方にまわしたらこんなに頼もしく見えるんだな。見直したよ。
そんなルイズを見ながら、主人は淡々と値を告げた。
「エキュー金貨で2000。新金貨なら3000」
それって高いんだろうか。
才人はこっちの相場も貨幣価値も分からないので
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