王都トリスタニアの休日
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ねえ」
一歩踏み込んだ途端、アンモニア特有の刺激臭やら腐敗臭やらが鼻を突く。
おまけに、ゴミや汚物の類が道端に散乱している。
実にきたねえ。
「これだからあんまり来たくないのよ」
そりゃ確かにこんな路は通りたくないだろう。誰だってそうだ、俺だってそうだ。
辟易しながら少し歩くと、四つ辻に出た。
「ピエモンの秘薬屋の近くだったから、この辺のはずなんだけど……」
立ち止まり、きょろきょろと辺りを見回すルイズ。
どうやら、軒先の看板を一つ一つ確認しているようだ。
「あ、あった」
そう嬉しそうに一声呟く。
視線の先を見ると、剣の形をした銅製っぽい看板が三軒先辺りに吊り下がっているのが見えた。
どうやらあれが剣屋、というか武器屋の看板のようだ。
二人は石段を登り、撥ね扉を押し開いて店内に入った。
店内は昼間だというのに薄暗く、ランプが灯されていた。
四列並んだ棚には剣の類が所狭しと並べられ、周りの壁には槍が竹林の如く立て掛けられている。
隅には、立派かつ武骨な甲冑が飾ってあった。
そんな雑然とした店の奥、パイプをふかしていた50代ぐらいの親父が、店内に入ってきた珍妙な客ルイズと俺を胡散臭げに眺める。
どうもこの親父がここの店主らしい。
店主の舐め回すような視線は、ルイズのタイ留めに刻まれた五芳星で止まった。
パイプを放し、ドスの聞いた声があがる。
「旦那、貴族の旦那。ウチは真っ当な商売してまさぁ。
お上に目をつけたてるようなことなんか、これっぽっちもありませんや」
うわあ、胡散くせえ。
それが才人の第一印象だった。
「客よ」
ルイズが、なにやら勘違いしている店主に腕を組んで言った。
すると、店主の態度と表情と声色が、いきなりコロリと、なんというかこう、反転した。
「こりゃおったまげた。貴族が剣を! おったまげた!」
「どうして?」
「いえ、若奥さま。
坊主は聖具をふる、兵隊は剣をふる、貴族は杖をふる、そして陛下はバルコニーからお手をおふりになる、と相場は決まっておりますんで」
座布団一枚、とでも言って欲しいんだろうかこのオッサンは。
顔に笑みを浮かべ、卑屈な態度で人当たりのよさそうな声を出す店主に、そんなことを思った。
とりあえず、そっちはどうでもいい。
俺はその辺に転がってる"本物の武器"の観賞に忙しい。
「使うのはわたしじゃないわ。使い魔よ」
「忘れておりました。昨
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