王都トリスタニアの休日
[4/15]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ど繰り返したところで諦め、ぱた、と手を下ろして恨めしげに見つめてみる。無表情に。
すまなそうな顔をしながら、キュルケが言った。
「わかってる。あなたにとって虚無ウィルドの日がどんな日だか、あたしはよく知ってるわよ。
でも、今はね、そんなこと言ってらんないの。
恋なのよ! 恋!」
それでわかるでしょ、と視線で問われたが、わかりもしなければ納得も出来ないししたくない。
説明を要求する。
「そうね、あなたは理由がないと動かないんだったわね……、ああもう! あたしね、恋したの!」
知ってる。
「でね? その人が今日、あのにっくいヴァリエールと出かけたの!
あたしはそれを追って、二人がどこに行くのか突き止めなくちゃいけないの!
ここまでいい?」
いい。
彼女と一緒に出かけた、ということは……、今度のキュルケの相手は、二週間前に"青銅"に辛勝していた使い魔の男子だろうか。
で。
それで、なんでわたしに頼むの?
「馬に乗ってっちゃったのよ!
あなたの使い魔じゃないと追いつけないの! 助けて!」
半泣きになりながら抱きついてきた。
しかたない。
しぶしぶながら一頷きしておく。
「ありがとう! じゃあ、追いかけてくれるのね!」
こくり、ともう一頷きする。
だから、早く本返して。
手を差し出したら、握りしめて感謝された。
そうじゃなくて、本。
視線をじっと上げられっぱなしの本に向けていたら、バツが悪そうに本を返してくれた。
受け取った本を胸に抱き、窓を開けて口笛を吹く。
ぴぃーっ、と音が天高くまで響き渡り、豆粒みたいな深い青がどんどん膨らみながら降りてくる。
豆粒大が握り拳大になったところで窓から飛び降り、3階の床を過ぎた辺りで滑り込んできたシルフィードに、その体を受け止めさせる。
キュルケも、間を置かずに背後に落ちてきた。
この乗り方にも最近はだいぶ慣れてきたと思う。
シルフィードは嫌がってたけど。
痛いのね、だそうだ。
二人がちゃんと乗ったのを確認したシルフィードは、その翼をばさばさと羽ばたかせて気流を捉え、200メイルmほどを一気に空へ逆戻っていく。
「いつ見ても、あなたのシルフィードには惚れ惚れするわね」
キュルケは突き並んだ背びれにつかまりながらそう感嘆している。
……あれ、そういえば。
「どっち?」
それがわかれば、楽に見つかるのだけれど。
「あ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ