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fate/vacant zero
王都トリスタニアの休日
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った。

 勅命が届かない限り、自分の世界に好きなだけ浸っていられる。


 実にありがたかった。


 いまの彼女にとって他人とは、自分の世界への無粋な闖入者ちんにゅうしゃを指す。

 それは数少ない友人でさえ例外ではなく、よほどの事情でもない限りは鬱陶しいと感じるほどに。



 その例に漏れることなく、果して今日もドアは小突かれた。



 タバサはそれをいつものように無視する。

 物語はちょうど佳境に入るところだ。

 こんな美味しいところで中断するなどありえない。



 だんだん、ノックが激しくなってきた。耳障りだ。


 机に立てかけておいた杖を手に取り、僅かなルーンを雑に紡ぐ。

 部屋中に魔力を染み渡らせた。

 『凪サイレント』の魔法だ。

 これにより部屋の空気はその振動を放棄し、全ての音はタバサに届かなくなる。



 なお杖をとってからのこの間、タバサの目は本から全く逸らされていない。

 そこまで本が好きか。



 よし、と杖を離して本に没頭する。

 できればそのまま諦めて欲しいのだ。今は、忙しい。

 ドアには鍵も掛かっているし、よほどでなければ入ってくることは――





 あったらしい。


 ドアが勢いよく開き、キュルケが部屋へ足早に入ってくるのが視界に入った。

 キュルケはタバサの隣まで来ると大口を開けなにやら喚こうとしたが、ここは『凪サイレント』の勢力圏だ。

 当然、声など伝わるはずも無い。



 あまりの無反応っぷりで『凪サイレント』に気づいたキュルケは一つ溜め息をついて、手から本を取り上げていった。


 いい場面で強制的に没頭を中断されたのはかなり気に障ったが、まあ無視していたのは自分なわけで。

 おまけにその相手はキュルケである。

 数少ない友人だ。


 これが他の相手だったら、『風鎚エアハンマー』でも使ってお帰り願うのだが。


 仕方が無い。



 タバサはしぶしぶと杖を一振りし、『凪サイレント』を解除した。

 した途端にキュルケが喋りだした。

 手を放されたオルゴールみたいに。



「タバサ、今から出かけるわよ! 急いで支度をしてちょうだい!」





 そ ん な。



 今日はのんびりできると思ってたのに。

 未練がましく恨めしく、でも顔には出さずにタバサは呟く。



「……今日は虚無ウィルドの日」

 だから返して、と本に手を伸ばす。

 が、キュルケが高く掲げてしまった本には、ぴょんぴょん跳び跳ねても手が届かない。


 二回ほ
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