王都トリスタニアの休日
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「俺は平賀才人だ。よろしくな」
剣は、黙っている。
さっき、何かに気付いたようにセリフを途中でぶったぎってから、ずっと黙りこくっている。
「おーい?」
やっぱり反応がない。
どうしたものか、と首を捻った頃になって、ようやくポツリと声がした。
「おでれえた。寝ぼけちまってたか。てめ、『使い手』だな?」
「『使い手』?」
ルーンのことか?
いや、ルーンのことだったら使い"手"なんて表現になるはずが。
「ふん、自分の実力もしらねえのか。まあいい。てめ、俺を買え」
実力ね。
やっぱ、ルーンのことなんだろうか。不思議。
「言われんでも買うさ」
その返事で満足したのか、剣はまた黙りこくった。
「ルイズ。これで頼む」
えええ、と言わんばかりの顔になっているルイズに告げた。
「ええええ。そんなのにするの? もっと綺麗で喋らないのにしなさいよ」
本当に言ったし。
そう言われてもな。
もっと綺麗なのなんか買えるのか、お前。
「いいじゃんかよ。こんな面白い剣なら、大歓迎だぞ?」
「喋るだけじゃないのよ」
ルイズはまだ不満げに文句を言ったが、財布の中身を思い出したのか、妥協することにしたらしい。
「あれ、おいくら?」
「あれなら、100で結構でさ」
ルイズの目が少し見開かれた。驚いているらしい。
そういや、さっき相場は200とか言ってたっけ。
「安いじゃないの」
「こっちにしてみりゃ、厄介払いみたいなもんでさ」
ひらひらと、手を振りながら店主はそう言った。
才人はいったん錆びた剣を店主に渡すと、上着のポケットからルイズの財布を取り出し、ひっくり返して中身の全てをカウンターのトレイの中にぶちまけた。
ひと山になった金貨を、店主は慎重に数えた。
少しの間の後、「毎度」という店主の声がする。
支払い満了。
「どうしてもうるさいと思ったら、こうやって鞘に納めてやれば大人しくなりまさあ」
才人は、店主から鞘に納められたデルフリンガーという銘の剣を、確かに受け取った。
さて。
武器屋から出ていった才人とルイズの後ろ姿を見つめる、二つの影があった。
……あいや、片方の影は見つめていない。本に没頭していた。
言わずもがな、キュルケとタバサの二人である。
キュルケは路地の陰から二人を見送ると、ぎりぎりと唇を噛み締めた。
「ヴァリエールっ
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