王都トリスタニアの休日
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、才人は大きく息を吸い込んだ。
「どこだ!」
「ここだよ! おめえの目は節穴か!?」
叫んだら、間髪入れずにちょうど目の前・・・から返事が返ってきた。
目に映っていたのは、抜き身の、錆の浮きまくった一本の剣である。
声は、コレから発されているらしい。
「剣が喋ってる、んだよな?」
「そうだよ! 気付くのおせえぞ愚図!」
愚図は余計だ。
じゃねえ、間違いない。剣が喋っている。
おもしれえ。
どういう仕組みなんだかさっぱり理解できない辺り、実にいい。
「やいデル公! お客様に失礼なことを言うんじゃねえ!」
デル公ってなんだ、と思ったが、まあそれは後回しだ。
「お客様? 剣に振られるような小僧がお客様だ?
ふざけんじゃねえよ! 耳をちょん切ってやらあ! 顔を出せ!」
才人は、じっくりとその剣を見つめた。
完全に興味がシフトしたらしい。
「それって、インテリジェンスソード?」
長さはさっきの大剣となんら変わらないが、刀身がやや細い。
薄手の長剣だった。
「そうでさ、若奥さま。意思を持つ魔法剣、知恵持つ長剣インテリジェンスソードでさ。
いったいどこの魔術師が始めたんでしょうかねえ、剣を喋らせるなんて」
ただ、表面には錆が至るところに浮いている。
手入れとかされてなかったのか?
「とにかく、こいつはやたらと口は悪いわ、客にケンカは売るわで閉口してまして……。
やいデル公! これ以上失礼があったら、貴族に頼んでてめえを溶かしちまうからな!」
しかしまあ、喋る剣か。
それだけでも……、って、トかす?
「おもしれえ! やってみろ! どうせこの世にゃ、とっくに飽きが来ちまってたところさ! 熔かしてくれるんなら上等だ!」
熔かす!?
「やってやらあ!」
こっちに向かって歩き出そうとした主人を、才人は片手で遮った。
冗談じゃない。
「まあまあ。もったいないよ。喋る剣なんて、最高に面白いじゃないか」
そう言うと才人は、左手で錆の浮いた剣を握って、棚から引っ張りおろした。
握ったとたんにルーンが光を帯び始めたのは、言うまでもない。
「お前、デル公っていうのか?」
「ちがわ! デルフリンガーさまだ! 覚えと――?」
へえ。名前がまたファンタジー調で実にいいな。
って、いま変なところでセリフ切らなかったか? こいつ。
「名前だけは、一人前でさ」
主人が、ぼやくように言った。
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