王都トリスタニアの休日
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人の恋路を邪魔するモノは、地獄の業火で焼き尽くせ。
ツェルプストー家の家訓であった。
しかし、そんな馬の蹴たぐりも結局のところは無駄足に終わった。
部屋の中はもぬけの殻だったのである。
「あらー……? どこ行っちゃったのかしら」
きょろきょろと、部屋の中を物色する。
相変わらず色気のない部屋ねぇ、と以前入った時の部屋の様子と比べながら思う。
幕もついてないベッド、無造作に置かれたテーブルやチェア、飾り気のないクローゼットに箪笥ブルーシュト。
あら?
箪笥ブルーシュトの横に、鞄が置いてあったような気がするのだけれど。
記憶と照らし合わせてみる。
うん、確かにあった。
ほんの半月ほど前の話だ。
それが部屋のどこにも無くなってる、ということは……。
おもむろに、窓から外を見回してみる。
門から外へと出ていく、二つの騎影が見えた。
もう少し目を凝らしてみると、はたしてそれはサイト、とルイズだった。
「なによー、出かけるの?」
つまんない。
でも、追いかけようにも、向こうが馬に乗ってるんじゃ追いつけない……、追いつく?
しばし考えたキュルケは、何処ぞ遠い世界のガキ大将に苛められる少年のごとき短絡さで、己の親友に助けを求めることにしたらしい。
ドアに鍵を掛けなおすこともせず、階段へ走っていった。
してその親友はというと、随分と久しぶりで自由な休日に、限界一杯まで羽を伸ばしていた。
といっても、部屋に引き篭もってベッドに沈みながら、赤縁の眼鏡の奥の海色の目を綴文に向けて、きらきらと輝かせているだけだが。
一週間前に手に入れた戦友兼師匠な短剣は、そのあまりの退屈さに辟易しながら使い魔の竜を呼びつけて、お喋りというか高飛びに興じていたりする。
そんな彼女が誰かと問えばまあ、言うまでもなくお察しの通り。
タバサである。
タバサは、実年齢よりも4つ5つほど若く見られることが多い。
成長の止まっている背丈は同年代の中でも小柄なルイズよりさらに5サントセンチばかり低く、体は輪を掛けて細っこいためだ。
とはいえ、当人がコンプレックスを持っているかといえば、そんなことは特段ない。
むしろ、戦うにはその方が都合がいい、とすら考えているくらいである。
恋愛など後回し、というか、いまのタバサの頭には自分がそれを享受するイメージなど毛頭なかった。
タバサは、虚無の日きゅうじつが好きだ
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