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fate/vacant zero
微熱のお時間
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たら凍死はしねえだろ、と思いながら扉に手をかけたら、後ろから呼び止められた。



「こら、どこ行くのよ」


 いや、どこって。


「寝床だけど?」


 寝床を廊下へ放り出したのは、お前だろうに。

 もう忘れたのか?


「ああ……、もういいわよ。部屋で寝なさい。またキュルケに襲われでもしたら、大変でしょ」


 今の「ああ」ってなんだ。

 マジで忘れてたのか。



「いいのか?」

「いいの」



 そうか。なら、お言葉に甘えよう。


 羽ペンと日記を忘れずに回収して、藁わらたばと毛布を廊下から部屋の一角――元あったところに押し込んだ。

 毛布にくるまり、そのまま横になる。









 ほのかな月明かりに映し出された部屋の中、寝る前のわずかなまどろみの間、才人は左手の甲をぼんやりと眺めていた。


 剣を買ってもらえるようになったのは、実にありがたかった。

 これでようやく、ルーンの実験の続きが出来る。


 まさか、自分自身でこれほど面白いことが出来るなんて、むこうで燻ってた頃には思いもよらなかった。

 ルイズの数々の所業にはなんとも腹は立つものの、今なら、こっちへ召よんでもらったことには感謝してもいいかもしれない。

 帰れないってのはナンセンスだがな。


 それにしても、今日は慌ただしかった。

 キュルケの、恋。

 情熱、か。


 情熱ね。



 燃えるような恋がしたい。

 その気持ちは俺にだってわかる。

 ていうか、俺もそう思ってる。


 だけど、その為に相手をとっかえひっかえする、ってのは何かどっかが違うと思う。

 そんなのは、きっと恋じゃない。


 それこそ、"恋"に恋しちまってるんだ。

 それじゃ、相手が可哀想じゃないか。

 そんなん、長続きするわけがない。


 俺は、恋したヤツには精一杯、幸せになってほしいと思うから。

 いまは名前も覚えてねえけど、そんな男に恋して不幸になっていったヤツを、知ってたから。


 だから、俺は恋をしたい。恋を、しあいたい。


 キュルケのように移り気な相手じゃなくて、俺だけに恋してくれるような、一途な相手と。

 自分でも恥ずかしいこと言ってんなって思うけど、まあこればっかはゆずる気はねえかな。


 しかし、目があかねえ。あ、もう寝てんのか、俺。







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