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fate/vacant zero
黒の地下水
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ていたではないか。



 『面白そう』だと。



「――許せない」


 ポツリと、呟く。

 タバサは、己の父をアルトーワ伯に重ねていた。

 何の咎も無く、ただ『王位を揺るがす者』というだけで殺されたオルレアン公を。


 ギリ、と音がする。


「やはり許せませんか!」

「あなたじゃない」


 そうやや強い口調で告げた時、背後で、扉がカタリと開いた。

 イザベラタバサが振り返ると、衛士の出で立ちをした男が立っている。



 顔を隠すためか、顔の上半分を覆う仮面マスケラを被っていた。

 それは東方から伝わった、精霊を模した仮面であった。

 つりあがったデザインの目穴の奥に、鋭い光をたたえた目が光っている。



「こんな時間に祖父ほども歳の離れた紳士の部屋を訪れるとは……、王女の所業とは思えませんな」





「"地下水"?」


 嵐の前のように静かな声ソプラノで詰たずねると、男は優雅な一礼を見せた。

 それは、昨夜の侍女が見せた礼と寸分たがわぬ動き。


「二晩も続けてお会いできるとは……、光栄至極」


 イザベラタバサは、怒りを顕著に含んだ声で告げる。



「誰に雇われたの? 言いなさい」

「生憎と、それは言うわけには行きませんよ。これも仕事ですので」


 "地下水"の慇懃な態度に、イザベラタバサは強い不快感を覚えた。

 だが、迂闊に攻撃しては二の舞に……。


 その警戒心が、ここで逆に命取りとなった。

 驚くべき速さで"地下水"は魔法を放ってきたのだ。


 『氷刃アイスカッター』。

 『風刃エアカッター』より、さらに威力の高くなった上位魔法ラインスペルである。

 4つの氷の刃が、風を切り開きながらイザベラタバサを襲う。


「Verticis 逆巻くAura!風よ」


 イザベラタバサは咄嗟に身体を守るつむじ風を纏ったが、3つめを弾いたところで威力が弱まってしまった。

 イザベラタバサの着ている薄い寝巻きが切り裂かれる。

 昨日の魔法の威力とは桁が違う。どうやら、彼が"本物"らしい。


 薄く腕から血を流しつつ、イザベラタバサは血の上った頭で呪文を紡ぐ。


「Ferocio 猛れVaporatus 水よIs Isa 吹き荒べBoreas風よ――!」


 紡がれたのは、得意の『凍える風ウィンディアイシクル』。

 だが、タバサは重要なことに思い至っていない。


 なぜ"地下水"は『風刃エアカッター』ではなく『氷刃アイスカッター』を使ったのか? ということだ。


 それは、水蒸
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