黒の地下水
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心底驚いた、といった風情でアルトーワ伯が尋ねてきた。
……あれ?
物理的にも首を傾げるイザベラタバサ。
身柄を押さえる手筈であるのなら、『かくまってくれ』などというセリフは好都合なハズである。
だというのに、アルトーワ伯の口ぶりからは、そんな陰謀は微塵も感じ取れない。
どうしたことなのだろうか?
「謀反騒ぎですか?
いやはや、こんな田舎におりますと、首都で何が起こっているのかとんと疎くなりましてな……」
……仕方ない、率直に聞いてみよう。
と、いうことで。
「そう。謀反騒ぎ」
じっとアルトーワ伯を見つめながら、そう切り出す。
「実は、あなたに謀反の容疑がかかっている」
「謀反ですと! このわたしが? 謀反などと!」
アルトーワ伯の顔が、一気に蒼白になった。
いよいよもって、話があやしい。
「税の払いが滞っているとか」
「去年は不作だったのです! それは申し上げたではありませんか!
なんなら記録もお見せします! ほれ!」
とアルトーワ伯は壁際の書架に駆け寄り、一冊の記録簿を取り出した。
「……今年の降臨祭では、宮殿へ顔を出さなかったとか」
「またそのような言いがかりを!
持病の通風が悪化して外出できなかったのです!
きちんとその旨、お伝えしたではありませんか!」
……この剣幕は、どうも本物のような気がする。
というよりも。
また、って、ナニ?
「そう……」
なんだか考え事に耽って遠い目になりつつあるが、イザベラタバサは頷いた。
「このわたくしの忠誠をお疑いになるとは!
侮辱ここに極まれり! 生きる気力も失いましたわい!
さればここで果てるゆえ、首をば王室に持ち帰り、この老貴族の忠誠の証とされい!」
そう叫ぶなり、杖を振って己に攻撃呪文を放とうとしたので、イザベラタバサは風の魔法でアルトーワ伯の手から杖を弾き飛ばした。
「邪魔だてされるか!」
「あなたの忠誠は疑うところがありません。申し訳ありませんでした」
タバサがイザベラを装い老貴族を慰めると、アルトーワ伯は、おいおいと泣きはじめる。
さて、これはどういうことだろうか。
こんな老人が、謀反を企てるなど考えるはずもない。
では、"地下水"を差し向けたのは、いったい誰か?
……考えるまでも無い。
疑わしきは間違った事前情報を渡した者。
加えて"地下水"が来ると知っていた人物。
そう、その張本人は、言っ
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