黒の地下水
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、とカステルモールはそれを手にし、しばらくの間受け取ったナイフを試すように玩もてあそんでいたが。
「今はお前が持っていろ」
と、再び衛士に手渡した。
その日の夜のこと。
ベッドに入っていたイザベラタバサが、ぱちりと目を覚ました。
なるべくなら、今晩中にはかたをつけたい。
そう考えたタバサは、早めに仮眠を取っていたのだった。
イザベラタバサは窓を開け、ぴぃ〜〜〜、と口笛を吹いた。
ばっさばっさと、シルフィードが上空から降りてくる。
「きゅ?」
と人語を避けるシルフィードに、短くイザベラタバサは命令する。
「乗せて」
「それで、今からどこ行くの?」
イザベラタバサを乗せたシルフィードが、夜の黒い空へと舞い上がった。
月が雲に隠れているらしく、かなり見通しが悪いようだ。
「アルトーワ伯の部屋」
「寝てるんじゃないの?」
「かまわない」
そう訊いたシルフィードは、屋敷の上空を飛び回る。
庭のところどころに、松明たいまつが掲げられており、屋敷はそれらの明かりによって、闇の中にぼんやりと浮かび上がっていた。
「きゅい。どこかわかんないのね」
きょときょとと見渡すシルフィードに、イザベラタバサが声を掛けた。
「あそこ」
「きゅ? どうしてわかるの?」
「最上階。もっとも日当たりの良い南向き。そして、あれは魔法の光」
「それだけで突撃するお姉さまって素敵ね」
シルフィードは呟くなり、その窓に向かって下降していく。
途中でイザベラタバサはシルフィードから飛び降り、『空中浮遊レビテーション』を使って窓枠に引っかかる。
窓にかかっていた鍵を『鍵開けアンロック』で外し、ふわりと中に滑り込む。
アルトーワ伯は、暖炉の前で本を読んでいるところで、窓から侵入したイザベラタバサに目を丸くして驚いていた。
「これはこれは姫殿下。こんな時間に窓からのご訪問とは……、いったいどうなされたのですかな?」
さて、ここからが難題である。
「かくまってください」
悲痛な声を選び、アルトーワ伯の前に進み出ながらそう告げる。
「かくまう? 穏やかでない!
いったい、なにがあったのですかな?」
……おや?
イザベラタバサは内心首をかしげながら、とりあえず演技を続けてみる。
「実は……、城から、逃げ出してきたのです」
「逃げ出した? ヴェルサルテイルで、いったい何があったのですか?」
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