黒の地下水
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かったのかい?」
こくり、といつもの調子で一頷きする。
「きゅい? ねえねえ、さっきこっちに来るとき、あなたがばら撒いてた花びらって何?」
「ん、アレか?
……あー……、あれなぁ。
イザベラの服の中に『眠り草』の花びらがこれでもかと詰め込まれてたから、騒ぎをでかくしないようにばら撒いてきたんだよ」
……つくづく気の毒に、アルトーワ伯。
せっかくの誕生日なのに、いきなり王女は裸で踊りだすわ、無理やり眠らされるわ……、目が覚める頃には昼を過ぎてしまうだろうか。
しばし瞑目して彼の幸せをお祈りする。
自分も原因の一端であるので、念入りに。
「んー。なあ、竜の子。
あんまり長く居座ってると怪しまれそうだし、そろそろお前さんたちの住処すみかに連れてってくれや。
トリステインだっけ?」
「きゅい、そうするのねー。あと、わたしはシルフィードっていう名前があるのね」
「ははは、風の精霊シルフィードって呼ばれるにはもう2・300年は我慢しねえとなぁ」
「ほっとくのね! どうせわたしは子供ですよーだ! きゅい!」
なにやら口げんかをしながらも、ばさり、と風を叩いてシルフィードが空を滑り出す。
「さて、と。
そんじゃあ嬢ちゃん、契約は成立でいいな?」
「いい」
「よし。そんじゃ、これから"地下水"は廃業だ。
嬢ちゃんの腹心として働くことにしよう。ただ、退屈だけは勘弁してくれよな?」
こくりと頷く。
今回のイザベラの気まぐれには随分と苛立たせられたが、それでもこの二千年を越えて生きているらしい凄腕の傭兵という協力者を得られたのは僥倖と言うべきだろう。
頬を撫でていく風を心地よく思いながら、タバサは本を取り出した。
どこにしまっていたかは……、乙女の秘密である。
それに気配で気がついたシルフィードが振り向き、お説教を始めた。
「もぅ、またぁ〜! これからもそんな調子じゃ、剣が退屈しちゃうわよ!
少しは会話を覚えなさいなのね! もう!」
「はっはっは、大丈夫だぞ? 俺は俺でそこの竜の子からかって愉しむからな!」
こくり、と頷いておく。
さっきのお返しだ。
誰が姐さんキワモノだというのだろうか。失礼な。
「きゅぃいいいいい!」
シルフィードの悲痛な聲さけびを聞き流し、本に没頭する。
とりあえずは、シェルンノスの『氷嵐アイスストーム』を突き抜けるぐらいの『氷嵐アイスストーム』を使えるぐらいには強くなろう。うん。
北花壇騎士、"雪風"のタバサ。
本名、
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