黒の地下水
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、服が切り裂かれた。
シルフィードは舞台の上空を旋回しながら、眼下の騒ぎを見物している。
園遊会はもう、大騒ぎであった。そりゃそうである。
仮にも王女が、生まれたままの姿になってナイフ片手にダンスを披露しているのだ。
慌てて目を覆うものがいた。
普通なら目にすることなど出来ようハズもない王女の肢体に釘付けになるものがいた。
早く止めろと騒ぐ良識あるものだっていた。
いやあれは王女の芸術である止めるのは侮辱、と言い張っているのはカステルモールだろうか。
まあなんにせよ、イザベラはガリア史上初、裸で舞った王女として名を残すことになるだろう。
「すごい! ちょっと可哀想だけど、あれだけお姉さまに意地悪してるんだから当然なのかしら! きゅいきゅい!」
そう快哉を叫ぶシルフィードの背びれにもたれ、タバサは軽い自己嫌悪に嵌はまっていた。
昨夜の自分は頭がどうかしていたのだろうか?
これでは、アルトーワ伯がさらに哀れなことになってしまうのではなかろうか?
いくらなんでも、ここまでやる必要は無かったのではないか?
というかそもそも、何故昨夜の自分はあれほど怒っていたのだろうか?
考えれば考えるほど、深みに嵌っていく気がする。
段々と後悔が押しつぶしにかかってきたことだし、そろそろ頃合ではないだろうか、と現実逃避気味にタバサは思う。
「見て! お姉さま! あの王女ってば、もうお嫁にはいけないわね!
見て見て! わぁ! ちょっと! いまの格好夢に見ちゃいそう!」
地味に傷をざくざくぐさぐさ抉ってくれるシルフィードの後ろ頭を、とんとんと杖で叩く。
「なぁに?」
「そろそろ」
シルフィードのまなじりが残念そうに落ちる。
「えー。もうちょっと見たい」
「趣味が悪い」
「うー、お姉さまに言われたくない……、わ、分かりましたお姐さま!」
何か言いかけたシルフィードをじーっと見ると、変なイントネーションでわたしに了解の合図を返してきた。
昨夜のわたしって、そんなに怖かったの?
首がかくりと前に倒れる。
ちょっと落ち込んでいると、シルフィードが約束の合図、よく通る「るーー」という長い声を放っていた。
しばし待つ。
やがて園遊会の会場から、桃色の何かの花びらと突風を尾引かせながら"地下水"……、いえ、"シェルンノス"が飛び立ってきた。
わたしはそれに『空中浮遊レビテーション』を掛けると、杖に絡めてキャッチする。
「よう。あんなもんでよ
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