黒の地下水
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何かしらの目安なり目標なりが欲しいわけだよ。
それこそ、金とか。名声とかね」
「最後の質問。なぜ、イザベラは、私を襲わせたの?」
「――暇だからさ。退屈しのぎだよ」
なんでも、南ガリアで盛んな"闘竜"のように、魔法使いメイジ同士を戦わせて楽しむつもりだったのだという。
「イザベラは、自分のお抱えの騎士なんざ、将棋チェスの駒ぐらいにしか思ってねえ。
俺も、あんたも。その遊びに付き合わされたってわけだ」
それを聞いたタバサの周りの風がぶわりと揺らぎ、帯電しはじめる。
肩は怒りで震え、珍しいことに眉はひそめられ、唇は噛み締められている。
タバサのそんな様子に、シルフィードと"地下水"が震えだした。
ヤバイ、と。
「お、おいおい! そんなに怒るなって! 俺は命令されただけだよ!
頼むから溶かすだの埋めるだの沈めるだの雷撃だのは勘弁してくれ!」
「そ、そうなのね! まずは落ち着くのねお姉さま! 深呼吸! 深呼吸!」
すぅ…はぁあああああ。
思いっきり呼の方が長い深呼吸をかまし、どうにか溢れ出る精神力で青筋を押さえ込みながら、声を出すタバサ。
「許してあげるから、少し話を聞いて」
「あ、ああ。命を助けてくれるっていうんなら、大抵のことは聞いてやる」
"地下水"はふるふると震えながら、タバサの言葉を待った。
「わたしに、雇われてみない?」
「……ナヌ?」
意表をつかれたのか、マヌケた声を上げる"地下水"。
「契約条件」
しばらく、タバサの言う条件を黙って聞いていた"地下水"だったが、最後の条件を聞いたとき、思わず噴き出してしまった。
「い、いいよ、やってやるさ。
退屈しのぎには、丁度いいからな。
そんじゃ、これからよろしく頼むぜ。嬢ちゃん、竜の子」
なんだか焦った様子の"地下水"が気になったものの、とりあえずその場は頷いたタバサだった。
翌朝。
イザベラは、カステルモール……に握られた"地下水"から、任務完遂の報告を受けていた。
操られている間の記憶は、"地下水"の任意である。
消すもよし、夢を見させるもよし、意思だけを残して体の制御を奪うもよし。
この辺りは、『水』の使い手の本領である。
今のカステルモールは消されている状態だ。
"地下水"が手を離れたとたん、どうしてここに? と思うことだろう。
「それにしても、素晴らしい読みでしたなイザベラ様。
まさか、あれほど尽ことごとく律儀に予想通りの反応を返され
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