暁 〜小説投稿サイト〜
fate/vacant zero
雪のヴェール
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どう見ても読んでいない。

 というか、意識が現世に居ない気がする。



 ばさッ! と唸りをあげて羽ばたき、シルフィードは↓に加速する。加速する。

 地面手前で急減速し、池の傍らに降り立った。

 草原のど真ん中に作られたそれは、どうやら農水用のため池らしい。

 くんくんと水の匂いをかいで、おもむろに首を水面へとぶち込むシルフィード。


 ざばざばと首を動かし、水柱を立てて再び首を持ち上げた頃には、既に大量の魚が咥えられていた。

 はむはむ、んぐんぐと咬み飲み込みながら、上を見上げる。


 ……微動だにせずに主人が上から降ってきたので、取り急いで口の中身を丸呑みし、風の精たちに語りかける。


『風よ、空に舞う大気よ。縛鎖となりて、彼女を支えよ』


 精霊魔法。身の内に依る人間の系統魔法とは異なり、世界に溢れた力に依る魔法。

 広く大きな自然と契約しお願いをする魔法、と言った方がおそらく正しい。……正しいか?



 まあ何はともあれ、風の精たちはシルフィードの“お願い”を聞き届けてくれたらしい。

 タバサの落下点にあった空気が、渦を巻いて多重クッションになった。

 円く拡がるそのど真ん中を綺麗に直撃したタバサが、瞬く間に両側からソレに包み込まれた。

 タバサin空気の群れはそのまま落下すると、地面でバウンドしてゴムまりみたいに空へ跳ね戻っていく。

 そのまま放置していてもそのうち止まるだろうが、それを待つほどシルフィードはのんきではない。


 跳び上がった空気まり・・を解除はずす。

 再び中空へ放り出され、だがなんら変わることなく紙の塊りを眺めているタバサの襟首をくわえる。

 そのまま地面にそろりと降ろすと、一向に動く気配のないタバサから、本を噛み奪う。


 ……が、それでもタバサは動かない。

 あんまりといえばあんまりな主人の様子に、シルフィードはついつい攻撃ブレスじみた勢いの溜め息を吐いてしまった。

 いきおいに押され、後ろに転がって。タバサはようやく動き始めた。


 ぱちくりと瞬きし、手の中にあったはずの本がなくなっているのに気付いて、きょとんとシルフィードを見て首を傾げる。


 小動物っぽい愛らしさがあるが、シルフィードはそんなこと知ったこっちゃない。

 ジト目でタバサを睨んでいる。



「お姉さま」



 ? と逆側に首を傾げるタバサ。

「シルフィはさっき、お姉さまを振り落としました。
 そういう時は怒るなり驚くなり騒ぐなりしてくださいなのね。
 気持ちが沈んでるのはわかるけど、黙って落ちるがままってどういうこと?
 これから報告だっていうのにそんな
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