雪のヴェール
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わたし、寝ていて、目が覚めたらここに……」
侍女は目を点にして再度フリーズした。
どう見ても、何か知ってるようには見えない。
と、そこで侍女と顔見知りらしい衛士が彼女の顔に気付いたらしく、抱え起こしたまま殴られていた騎士に声を掛けた。
「隊長どの、彼女はお茶係のナタリーです。
殿下のお世話をするため、向かいの部屋に居る侍女の一人です」
つまり、身元は完全に割れている。そういうことである。
衛士隊の隊長らしい騎士は、苦い顔でナタリーを見つめる。
「ナタリーとやら、なぜ姫殿下を襲ったのだ?」
侍女の顔から、一瞬で血の気が引いた。ズサーッと幻聴おとが聞こえる勢いで。
「そんな、わ、わたくしが……?」
不審極まりないナタリーの態度で、タバサはイザベラの言葉を思い出した。
そう、『人の心を操ることを最も得意としている、』という言葉を。
「この! こっちに来い!」
真っ青なナタリーを乱暴に引っ張っていく衛士を、イザベラタバサは止めた。
「待って」
「ご安心を。今から我々で尋問して、何の目的があって姫殿下に危害を加えようとしたのか聞き出しますから」
どうやらこの衛士たちは、今回の犯人が"地下水"であることを知らされていないらしい。
それはそのはず、イザベラの計画ではそれを知るのはあの場にいたカステルモールとイザベラ自身しかいないはずなのだから。
「その子は、操られていただけ」
「操られていた?」
衛士たちは、突拍子の無い言葉に顔を見合わせた。
「わたしに任せて」
王女タバサにそう言われ、衛士たちは肯いた。
散らばったロープやナイフなどを拾い集めると、ナタリーを残して部屋を出て行く。
今朝もイザベラの横暴さに振り回されたばかりだったナタリーは怯えきっており、イザベラタバサが近づくと震え始めた。
「お、お許しを……」
「安心して。あなたを罰するつもりはないから」
「ひ……」
よっぽどイザベラが信用できないらしい。
ナタリーは、怯えながら後ずさっていく。
「覚えている範囲でいいから、詳しく話を聞かせて。
どこから記憶が無いの?」
いつになく柔らかいイザベラの話し方に、どうにかこうにか怯えをはずして語りだしたナタリーによると。
夕食の後、すぐに部屋に引っ込んで同僚たちと眠っていたらしい。
それで気付いたらイザベラタバサの部屋におり、床で気を失っていた、と。
となると、寝ている隙に"地下水"に操られてしまったのだろ
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