雪のヴェール
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『凍える風ウィンディアイシクル』を唱え始めたが、一瞬タバサが遅れている。
間に合わない――。
と。その時、窓枠とガラスをぶち破って、何かが部屋につっこんできた。
「ぐっ!?」
後ろから体当たりを食らった形の"地下水"から短い悲鳴が漏れ、床に転がった。
「きゅいきゅい!」
シルフィードだった。窓を破ったのは、突き出された首だったようである。
床に転がった侍女に、タバサは追撃の呪文を加えた。
『風槌エアハンマー』。
最初にタバサが唱えたものと同じそれは、的確に侍女を打ち据え、壁まで吹き飛ばす。
床に倒れこんだ時には、既に侍女は気を失っていた。
「お姉さま! だいじょうぶ?」
シルフィードが叫ぶが、ここがどこかを忘れてはいけない。
忘れていなかったイザベラタバサは、それに応えず唇の前に指を立てる。
間髪いれずドアがぶち破られ(どうも、地下水がしっかり鍵をかけていたらしい)どやどやと衛士たちがなだれ込んできた。
カステルモールの隊ではなく、宿の一階で警護をしていた衛士たちである。
「姫殿下!」
「イザベラ様!」
「平気」
イザベラタバサは一つ頷く。
「お怪我をされているではありませんか! 何事ですか!」
水の使い手たちが集まってきて、まだ血の止まらないイザベラタバサの腕に魔法をかけた。
顔を突き出したシルフィードを見て固まっていた数人が動き出す。
「風竜ではありませんか。どうなされたのです?」
「新しくペットにした」
と、タバサはごまかす。
流石に、いつも使っている『ガーゴイル』という言い訳はこれだけの魔法使いメイジ相手では使いようがない。
そもそもその前に風竜と気付かれているし。
まあ、衛士たちも気まぐれな王女の奇行には慣れているらしく、すぐにシルフィードを『いつものこと』と認識したようである。
無視して、侍女を抱え起こした。
「おい! 起きろ!」
揺さぶられた侍女は、ふわ、と欠伸を一つして目を開いた。
で、固まった。
まあ、周りをむっさい衛士たちにびっしりと囲まれてたら、固まるか暴れるか叫ぶかするだろう、フツー。
再起動した彼女も例に漏れることなく、残る二つを制覇した。
「きぃやあああああああああああああ!」
と悲鳴を上げた後、わたわたばたばたと手を振り回す。
「きゃあじゃない! あ痛!
貴様、こ、こら、王女を襲うとはどういうこだッ!?」
「お、襲う?
ど、どういうことですか?
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