雪のヴェール
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焦りを空転させていた。
「イザベラさまは、かなりの使い手のようですね。
さすがはガリア王家の一員、というべきですか……」
すっかりイザベラタバサをイザベラと思い込んでいる様子の"地下水"がつぶやく。
「さっきの『風刃』で人が集まってきてもなんですし……、急ぎますか」
言うなり、侍女は左手を突き出すと……とんでもない行動に出た。
「Ill 汚濁のAquae 水よSopor 昏睡のNubila蒸気と――化せ」
青白い雲が、イザベラタバサの頭を包み込むように現れた。
それに合わせて猛烈な眠気がタバサを襲うが、『トライアングル』である彼女は、どうにかぎりぎりのラインで意識を保つことができた。
そして、ある事実に驚く。
今のは、紛れも無く『眠りの雲スリープクラウド』。
系統魔法なのだ。
だが、あの侍女は杖を握っているようには見えない。
先住・・魔法とは違う。
貴族メイジが使う系統魔法には、発動媒介となる杖が必要不可欠だ。
と、いうことは……。
「Ferocio 猛れVaporatus 水よIs Isa 吹き荒べBoreas 風よ――」
そうこう考えているうち、"地下水"の次の呪文が完成してしまう。
次は、タバサの十八番である『凍える風ウィンディアイシクル』であった。
普段は敵に食らわせる氷の矢が、容赦なくイザベラタバサにむかって飛んでくる。
大きく跳び退ってかわしてみたが、数本が身体を掠めていった。
腕から、たらりと血が流れる。
"地下水"は、余裕めいた笑みを浮かべた。
「動かない方がよろしいですよ。急所は外してありますから。
ただ、動かれてしまうと、逆に心臓や喉に当たってしまいかねません」
次の呪文は、何が来るだろう?
タバサの思考が、フル回転しはじめる。
さっきの『凍える風ウィンディアイシクル』で、大気中の水分は使い切ったはず。
室内の湿度は限りなく0だろう。氷は、もう撃てない。
つまり――
そこまで考え至ったタバサは一息に呪文を唱え、自らの周りの空気を竜巻状に操る。
次は風だと読んだのだ。そしてその予想は的中した。
半分だけ。
確かに、"地下水"は『風刃エアカッター』を放ってきた。
しかしそれは、イザベラタバサではなく先ほどイザベラタバサに渡してきたティーカップを直撃したのである。
『風刃エアカッター』の衝撃で空中に中身のお茶が……、水分が攪拌されてゆく。
まずい。
両者が
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