雪のヴェール
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とは、人の持つ全てを捨てねば為せぬほど、危険な賭けなのだ。
タバサは、それを強要してしまう・・・・・ことを恐れているのである。
そして。理由はもう一つ。
あくまでも、仇は自分の手で討たなければならないのだ。
なんとしてでも。
そのために、もっと、もっと強くならなければならない。
本を読み、力をつけ。あらゆる敵と戦って、"力"を得なければ。
「あの憎らしい従姉姫に、一発食らわせるチャンスじゃないの。
どうなの? うりうり。ほらほら。
……何かお言いなのよ」
しかしイザベラタバサは何も言わずに、うりうりされるがまま。
そのうち、シルフィードは調子に乗りはじめた。
「まったくもう、お姉さまはそんな風だから学院でもお友達ができないのよ。
わかってるの? 今日という今日は言わせてもらいます」
しかしイザベラタバサは取り合わない。
無言で窓を指差し、じーっとシルフィードを見つめた。
要はすなわち、一言である。
出てけ、と。
「んもぅ! せっかく心配してあげてるのにぃ!」
シルフィードは窓の外に飛び出すと降りてきた時と同じく元の姿に戻り、飛び去っていった。
どこら辺の行動に心配してた要素があったかは、推して知るべし。
そうしてこうして夜はさらに更け、西の窓から二つの並んだ月が見えるようになった。
月明かりが部屋に差し込み、窓の格子の影をくっきりと床に描き始めた頃のこと。
イザベラタバサは、きしり……と部屋に近づく気配に気付き、ぱちりと目を開いた。
小机に置かれた眼鏡をかける。
次いで杖を握り、燭台の蝋燭ろうそくに点火する。
部屋が淡い光に包まれたと同時、きぃ、と軽い音を立ててドアが開いた。
一人の侍女が、ガラガラとワゴンを押しながら入ってくる。
その顔には見覚えがあった。
今回、お供にくっついてきていた侍女の中の一人である。
はて、と怪訝けげんにイザベラタバサが見ていると、侍女はワゴンに乗ったティーポットを取り上げ、お茶を入れ始めた。
現在、時刻は地球的に深夜2時。傍目からだろうが当事者からだろうが、どこから見ても不自然極まりない。
「どうぞ」
と、侍女はカップに注がれたお茶をタバサに差し出してくる。
イザベラタバサはそれを受け取ると、侍女をまっすぐ見つめて呟いた。
「地下水」
侍女はにっこり微笑んだ。
「よくご存知で」
渡されたお茶の香りを嗅ぐ。
不審な
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