雪のヴェール
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枕元から、手元に巻きつく何かから、そして外からもその音たちは聞こえてくる。
「それでもさ。
それでも、守ってやれるじゃないか。
少しでも、苦痛を減らしてやりたいじゃないか!
――あいつは、あたしの従妹いもうとなんだぞ!?」
ぎしり、と。
壁が撓たわんだ。
床が鳴った。
窓が軋んだ。
部屋中の全てが、のたうつ蛇のように歪んだ。
掠れる叫び声に合わせるように。
叫び声を、主の意思に応じて吸い取るように。
大きく息をついたイザベラの頬に、一筋の光が流れた。
少々、興奮しすぎてしまったらしい。
震える胸で、大きく息を整える。
気管が大きく揺ふるえてしまうが、気にもならない。
どうせ、一人の時はいつもこうなのだから。
「……ああ、大丈夫。大丈夫さ。
みんな、あたしを嫌ってしまえばいい。
あいつが幸せを探せるだけの道が出来るんなら、世界に嫌われるくらいどうってこと、ない。
――そう決めたんだから。あんたたちがいる。あいつは、生きている。
それで充分だ。あたしは、あいつの、従姉あねなんだから」
ざぁっ、と世界が鳴った。
一斉に。それらの持つ全ての が、一斉に縦に振るわれていた。
肯定の、従属の響きが、耳に届いた。
部屋の全てそれから。街の、全てそれから。
「――ありがとう」
彼女は、未だ誰にも見せたことのない、柔らかく花開く涙と笑顔を、それらの全てに向けていた。
「……で、だ。計画の要の"打ち水"は、まだなのかい?」
くき、と変な音がした。
「お姉さまは、ばかなのね」
素っ裸の女性が、窓の前で立ちすくんでいるイザベラタバサの前で指を立ててお説教している。
ってなんだこの光景。
「……」
イザベラタバサはぽりぽりと頬をかいている。
「せっかく、お姉さまの味方になってくれる人が現れたのに。
無視して追い返すってどういうこと? きゅい」
この声。この口調。あとタバサより深い青・色の長髪。
どうもこの裸婦、シルフィードらしい。
あれから少しして、部屋に入ってきたのだ。
シルフィードは、きゅい。と言いながらタバサの額をうりうりとつつきまわす。
シルフィードの言うことは尤もなのであるが……、タバサはこんな個人的な感情に、他人を巻き込んでしまいたくないのだ。
ことはカステルモールのみならず、その家族にまで害が及んでしまうような大事だ。
謀反
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