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fate/vacant zero
雪のヴェール
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 その種族柄、魔法はお手のものであり、その知識の中には人に化けるものすら存在しているのだ。

 それを使っている間は、他の魔法を使ったりすることは出来ないわけだが……。


 まあ、囮としては十分だろう。

 どうせ腕力体力はさほど変わっていないのだし。

 いくらまだ子供とはいえ、ドラゴンなんだから。

 しばかれでもしたら、たまったもんじゃない。



 ということで、囮になったシルフィードだが……、まあ、よくやったと言うべきか。

 威厳が無いのは、タバサ本人でも大差無いことだ。





 それからの事件の顛末を、駆け足で語る。


 到着初日の夜、エルザと呼ばれた女の子が襲われた。

 吸血鬼ではなく、『屍人鬼グール』――吸血鬼の従僕に。

 シルフィードらが駆けつけたことで、その場は収束した。

 この際に、タバサはエルザに境遇を少し重ねている。

 タバサは明け方に眠り、昼過ぎに起きた。


 二日目。

 つまり昨日のことだが、この日の夜、アレキサンドルと呼ばれる若者が、屍人鬼グールとなって村長の館(タバサたちの泊まっている所)を襲撃した。

 これを倒したのち、村人の暴走により、アレキサンドルの家に火が放たれた。

 中に居たと思われる老婆は、消し炭となって発見された。


 そして、丑三つ時と思われる頃。

 エルザにムラサキヨモギの群生地へと連れだされ、そこでエルザ――もとい、吸血鬼エルザに襲われた。

 事前に正体を予想していたタバサは、前もって呼んでおいたシルフィードの持ってきた杖により、彼女を滅ぼすことには成功したものの……、短い付き合いとはいえ、数少ない友達を滅ころした傷は、少々深いようだ。






「ねえー、お姉さまー。おなかすいたってばー! きゅい!」


 反応がない。

 タバサは、黙々と本を眺めている。

 ページはさっぱり進んでいない。


 いい加減、呼びかけるだけ無駄かなー、と変に悟りはじめたシルフィードは、眼下に湖を発見した。

 ちょうど、リュティスとサビエラの中間辺りである。

「池発見。たぶん魚がいると、風韻竜は判断するの」


 やっぱり反応がない。

 つまんない、と思いながらもシルフィードが呟く。


「おりるのねー」

 むろん反応などないが、意に介さずシルフィードは急降下する。

 勢いについていけなかったタバサは空中に放り出されるが、まったく姿勢を崩さずに地面へと一直線だ。

 バラバラバラと勢いよくページがめくれあがっているが、それでも顔は本に向けたまま。



 いまさら言うまでもないが、
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