古の伝説
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ここ、ヴェストリの広場は魔法学院の敷地内、『風』と『火』の塔の間にある中庭である。
その名の通り西側にあり、正門から尤も遠いため人気は4つの広場の内、最も少ない。
それだけ聞くと決闘にはうってつけかもしれないが……、噂を聞きつけた生徒たちが既にびっしりと溢れかえっていて、学院の偉い人に知られるのも時間の問題かもしれない。
……食堂で宣言した時点で既に知られているかもしれないが。
とにかく、その広場の拓けた中央。
先に来て才人を待っていたギーシュが、薔薇の造花を掲げる。
「諸君! 決闘だ!」
うぉーッ、と歓声が巻き起こった。
才人を連れてきたギーシュの友人が、ギーシュの宣告のあとを継ぐ。
「ギーシュが決闘するぞ! 相手はルイズの平民だ!」
……いい加減、平民と呼ばれるのにもなれちまったとはいえ。俺にだって、名前はあんだよ。
内心かなり苦々しく思いながら、ギーシュを睨みつける。
ギーシュは腕を振って、歓声に応えている。
やる気あんのか、とツッコみたくなった時、ようやく気付いたかのように振り向いた。
しばしの間、睨み合う。それだけで自然と、場には静けさが満ちた。
「とりあえず、逃げずに来たことは褒めてやろうじゃないか」
ギーシュが、薔薇の花を弄りながら、歌うように言う。
「誰が逃げるか」
ふ、っと口の端を吊り上げたギーシュは、宣告を持って返事とする。
「さて、では始めようか」
その声の残響が消えない内に、才人は動き出していた。
一気に距離をつめ、まずは無視してくれた礼からぶちこんでやる。
ケンカは先手必勝だ!
ギーシュまでは、ほんの十歩程度の距離だった。
メイジだか、貴族だかはどうでもいい。
あの高慢そうな鼻っ柱から、叩き折ってやる!
そんなことを考えながら、もう一歩踏み込めば衝突する距離までを一気に詰めた。
ここなら、渾身で拳が当たる。
詰めた距離を助走にし、勢いを殺さずに右手を振りかぶる才人。
だが、対するギーシュはそんな才人を余裕と嘲笑の目で見つめると、手にした薔薇の"造花"を一振りした。
何の真似だ?と怪訝に思いながらも、右手を憎たらしい鼻っ柱へ振りぬこうとする才人の拳の前に、薔薇の花びらが一枚舞っていた。
壁か何か殴ったかのような反動と共に。右手が、みしりと嫌な音を立てた。
「ッ、なんだ……こいつ!?」
才人の右拳は、ギーシュの横から伸ばされた、甲冑をまとった女戦士の、緑色
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