古の伝説
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も、根こそぎ剣に裂かれてしまっていた。
続闘を否定する声を上げようとしたが……、震えた声しか出そうになかった。
格好悪いな、と思った。
だが……、震える声でも応えてやらねばなるまい。
それが礼儀であり、ルールなのだから。
――そうして。
ギーシュは勝者に、降参を告げた。
苦々しく──だがどこか少し、少しだけだけど晴れやかな。
新鮮で、複雑な思いを胸に。
「ま、参った」
ふう。
終わったんだ────そう実感した途端、なんだか一気に力が抜けてしまった。
剣から手を放し、力が抜けて重くなった体で、のっくりルイズの方へ歩いていく。
あの平民やるじゃないか! とか、ギーシュが負けたぞ! とか、野次馬どもからの歓声がどこか遠く届いているが。
今はとりあえず措いて置いて。
さて。ちょっと考え事をしよう。
何故、勝ててしまったんだろうか、とか。
なんで俺はあんな動きが出来たんだろうか、とか。
そもそも、青銅で青銅を切り裂くってどんな怪現象だ、とか。
いろいろ、ふらつきながら考えてみる。
考えてみた。
結論。わからん。
何の答えにもなってない気がするが、それもまあいいか、と本気で思った。
だって、いくら考えても想像が付かないほどわからないだなんて、これ以上のない面白いことなんだから。
けど、俺自身にサイケなパワーが宿ってるんだとしたら、どういうことが出来るかは、全部自分自身の体で試さないとダメなんだろうか。
ちょっと面倒いなぁ、と思う。
思った、けれど。ほんの少し、本当に少しだけ裏っ側を捲ってみるだけで、こんなにおもしろいことが山盛りなんだ。
この世界も、悪くはねえのかもしれないなあ──
そう考えながら、
才人は全身を投げ出すように、豪快にすっ転んだ。
「サ、サイト!?」
いきなり倒れかけた才人の体を支えようと駆け寄ったルイズは、だが、ちょっと勢いがつきすぎた体を支えきれず、あと重さにも負けて地に潰された。
才人ごと。
「サイト!」
体を揺さぶってみるが、反応が無い。
ただ、胸に置いた手からは大人しめの鼓動が伝わってくるので、死んではいないらしい。
というより。
「……サイト?」
「ぐー……」
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