古の伝説
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さて、これはどういうことだろう。
剣を引き抜いた頃から、だんだんと体の痛みが引いていった気がする。
傷自体が治ったわけではない。動かせば痛いことは痛いのだ。ただ、その痛みが妙に鈍くなった。
体から血が抜けていったせいかとも疑ったが、そういうことでもなさそうだ。
力は、全身に漲みなぎっているのだから。
おまけに、体が風のように軽い。
力いっぱい羽ばたいたら、飛べるんじゃないかってくらい軽い。
……やらねえけどな、右手砕けたまんまだし。
後はそう、左手の握る剣だ。
まるで手と一体化したかのようによく馴染んでいる。
今まで握ったことはなかったけど、剣って、こんなに簡単に振り回せるもんなんだろうか?
まじまじとその手を見ていると、何やら淡く光を放っているのが分かる。
正確には、そこに刻まれたルーンが発光していた。
……ひょっとすると、これのせいだろうか?
そんなことを考えて前を向くと、冷たい笑みを浮かべたギーシュと目が合った。
「まずは、誉めよう。
ここまで貴族メイジに楯突く平民がいることに。素直に、感激したよ」
そう言って、薔薇を一振りした。
どうやらあの薔薇そのものも、"青銅"製の造花だったらしい。
あの棘の跡一つない薔薇の枝が、魔法の杖本体のようだ。
どこまでもキザな奴だな。
しかし、なんで俺はこんなに余裕があるんだろう?
……って、簡単な話だな。
負ける気が、してないんだ。
そりゃ余裕もできるってもんだ。
つぃ、とギーシュのゴーレムが襲い掛かってくる。
青銅の塊。
戦乙女ワルキューレの姿をした像が、ゆっくりと……。
……ゆっくりと?
こいつら、こんなに鈍のろっちかったっけ?
いや、違う。俺が、視える様になってるんだ。
これも左手の仕業だろうか?
おもしれえ、けど……考えるのは後でも出来る。
そんなことを考えながら……、俺は跳んだ・・・。
自分のゴーレムが、『戦乙女ワルキューレ』が丸太のように切り裂かれた。
突然の異様な速さに舌を巻く間に ぐしゃり、と両断されたゴーレムの上半身が地に落ちる。
それを合図に、『風刃エアカッター』のように速く突っ込んでくる奴・が見えた。
たかが、平民ごときに……、いや、あれほど殴り倒しても笑いながら起き上がり続けてくる相手が、"ただ"の平民であってたまるものか。
このままただ突っ立っていては、負ける。
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