古の伝説
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というのですか! オールド・オスマン!」
半ばまで禿げあがった頭を拭いながらまくしたてるコルベールから目を外し、改めて文献のソレと、スケッチとを見比べるオスマン老。
「ふむ……、確かにルーンは同じじゃ。
ルーンが同じである以上、ただの平民だった少年は、『ガンダールヴ』となった、ということになるんじゃろう」
「いかが致しましょう?」
「ふむ。じゃがしかし。これだけで、そうと決めつけては早計かもしれん」
当時のソレをその目で見た者は、当然ながら遠の昔に墓の中だ。
本当の本当にソレがそう・・であるかと問われては、答えられるものなど居はすまい。
「むぅ。それもそうですな。
何か、その証明となるものでもあれば別なのですが――」
両名は一つ唸って、考え込んでしまった。
とそのとき、ドアがコツコツとノックされる。
「誰じゃ?」
「私です、オールド・オスマン」
扉の向こうから聞こえてきたのは、ミス・ロングビルの声だった。
「なんじゃ?」
「ヴェストリの広場で、決闘をしている生徒がいるようです。
大騒ぎになってしまっているのですが、教師たちも生徒たちに邪魔されてしまって、
止めることができないようです」
オスマン老は、頭を抱え込んでしまった。
「まったく……、暇をもてあました貴族ほど、性質たちの悪い生き物はおらんのぅ。
で、誰が暴れておるのかね?」
「一人は、ギ−シュ・ド・グラモン」
「あの、グラモンとこのバカ息子か。
親父も色の道では剛の者じゃったが、息子も輪を掛けて女好きじゃ。
おおかた女の子の取り合いじゃろうよ。相手は誰じゃ」
「……それが、貴族メイジではありません。
ミス・ヴァリエールの使い魔の少年のようです」
なぬ? と顔を見合わせる室内の二人。
「教師たちは、決闘を止めるために『眠りの鐘』の使用許可を求めております」
これはもしかすると……、と、オスマン老の目が鷹のように光る。
「アホか。たかが子供のケンカを止めるのに、秘宝を使ってどうするんじゃ。放っておきなさい」
「わかりました」
足音が、だんだんと遠ざかっていく。
ミス・ロングビルはその場を立ち去ったようだ。
コルベールの唾を飲み込む音が聞こえた。
「オールド・オスマン」
「うむ」
考えは同じらしい。
オスマン老が杖を一振りすると、壁に架かった大きな鏡に、ヴェストリ広場の様子が映し出された。
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