暁 〜小説投稿サイト〜
fate/vacant zero
古の伝説
[4/14]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
した途端、ギーシュの顔から表情が消えた。

 ゴーレムの右手が、本体ごと飛んできている。モロに頬にくらって、才人はまた吹っ飛ばされた。


 歯が何本か折れ、口の中を転がっている。

 折れた歯を吐き捨て、よろめきながら立ち上がる。

 何故か、笑いがこみ上げてきた。


 すげえな……、これが、魔法使いメイジの力か。

 多少のケンカはこなしてきたが、こんな重い攻撃を食らったことは今までに一度も無かった。


 才人の口の端には、笑みと血が滲んでいる。

 どうやら、才人の好奇心はこんな状況であっても発動してしまったらしい。


 "初めて"くらった"魔法使いメイジの攻撃"に、青銅の『戦乙女』に、才人は限りなく心を揺り動かされていく。

 よろよろとよろめきながらも、それでも立ち上がっていく力が、その"興味"から引き出されている気さえしてくる。


 だが立ち上がる都度、ギーシュの『戦乙女』が、よろめく体を容赦なく傷めつけてきた。


 ぎりぎり交わした拳は横薙ぎに払われ、ラリアットとして背中を襲う。

 ギーシュの方に都合よく弾き飛ばされたため、立ち上がりながら繰り出そうとした右拳が、後ろから『戦乙女』に殴り落とされて砕ける。

 左のこめかみにコマのような回し蹴りをくらった。

 鼻に拳が直撃する。胸に、肘の寸打が横殴りに入る。

 拳を避けようとしても、なんらかの変則的な動きをする"銅像"によりどこかしらにことごとく命中してしまう。


 才人が立ち上がるたび、そんな行動は繰り返されていた。


 左目は、既に血で塞がってしまった。

 右目で、右手を確かめる。指が、色んな方向へ好き勝手に曲がっている。

 『戦乙女』の飛び蹴りが、右手を興味深く眺めていた才人の顔面に直撃し、頭を強く地面に打ち付けた。


 意識が、一瞬飛んだ。でも、それでも――











 目を開けたとき、そこには青空をバックにしたルイズの顔があった。



「お願い。もうやめて」


 悲痛な面持ち。揺らめく鳶色の瞳。

 ……揺らめく?


「――*――£;───」


 ……声が出ない。というか、がらがらとのどの奥で音がして、咳き込んで、赤いものを吐いた。

 全身痛いが、胸が飛び切り痛い。どうも肋骨まで逝っている気がする。


 ……何かのマンガでみた方法を試してみよう。

 大きく、息を吸って――



 バキボキ、と音がして、肺が肋骨を押しのけた。


 おお、ホントにこれでも何とかなるのか。

 そんなことを思いながら、声を出す。


「――ない でる
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ