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fate/vacant zero
古の伝説
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いびきが聞こえる。

 肋あばらとか手とか折れて砕けたはずなのに、頑丈にも寝ているようだ。


「なによ、もぅ……」


 ルイズは、心配そうに苦笑しながらため息をつくという器用なことをした。

 治療を急がなければならない重傷のはずなのだが、どうもこの寝息は焦りを奪うのだ。


 ふと横を見れば、ギーシュが立ち上がって、首を振っていた。


「ルイズ。彼は、何者なんだ?
 このぼくの『戦乙女ワルキューレ』を倒すなんて……」


「ただの平民でしょ」

「ただの平民は、青銅の剣で、青銅のゴーレムを切ることができるモノなのかい?」

「ふん。あんたの作り込みが甘かっただけじゃないの?」


 ルイズは才人の下から這い出ると、そのまま彼を抱え起こそうとした。

 が、支えきれずに転んでしまった。というか、また下敷きになった。


「あぁあもう! 重いのよ、このバカぁ!」

 堪り兼ねて叫ぶルイズを見兼ねてか、周りで見ていた生徒の誰かが『浮遊レビテーション』をかけてくれた。


 浮かび上がった才人の体を、ルイズは寮に向かって押していく。

 早く部屋に運んで、治療してやらなくちゃ。

 あばら骨と右手が折れてるのは分かってる。けど、あれだけ殴られていたのだ。

 絶対にまだ10や20はおかしくなってるところがあるはず。

 まずはそれを探ることから始めなきゃ……っぅ。



 ルイズは、目をごしごしとこする。

 痛そうで、可哀想かわいそうで、どうも涙もろくなってしまうのだ。

 最後に剣を握った時、なんでかルーンが光っていたけれど、あれが無かったら死んでいたかもしれない。


 勝つことより、そっちの方を気にしなさいよ。


 このバカは、わたしが喚んでしまった大バカは、ここで死ぬかもしれないなんて少しは考えたんだろうか?

 変なプライドばっかり、振りかざして……。


 ただの。平民のクセに。



「使い魔のクセに。勝手なことばっかり、するんだから」



 ルイズは、寝ている才人を軽くこづいた。

 安心したら、急に頭にきてしまったのだ。











「――ま、これぐらいはしてやってもいいわよね。サイトのためですもの」


 そうのたまって『空中浮遊レビテーション』を使った杖を胸元へしまいこんだのは、炎髪でグラマラスな少女。

 その瞳には、妙な力がこもっていた。

 人ごみから離れ、広場の隅の置石のところへ歩いていくキュルケは一人笑う。


「ふふふ、燃えてきたわ……、これよ、これ!

 この湧き上がる、燃え上がるような快感!
 今まで
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